ビジネスパーソンは「社会人」なのか?(【連載18】新しい「日本的人事論」)

画像: Raita Futo

2018.11.17

組織・人材

ビジネスパーソンは「社会人」なのか?(【連載18】新しい「日本的人事論」)

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

●「社会人」とは

社会人とは、「実社会で生活する人」であり、「会社の枠やルールの中だけで生きる人」ではない。実社会に存在する多様な枠組み(パラダイム)を知り、それらを上手にバランスさせながら物事を判断し、言動を選択しなければならない。社会人であるなら、少なくとも次の5つの視点を意識・理解することが重要である。

一つ目は、自身の欲求の視点である。自分がやりたいことがやれているか、自分の強みや特長を活かせているか、自分らしく働けているか、自分らしく貢献できたか、といった視点だ。会社や上司に与えられるのを待ち、言われたことをやり、あいまいな場面では上手に忖度を加えながら物事を進めていくような姿勢は、組織に保護してもらうのにはいいだろうが、良い歯車に終わってしまう。

二点目は、組織内の他者の期待からの視点だ。自身の欲求のまま動くだけでは社会性に欠ける。自分が考えている自分と、他者の期待が十分に噛み合っているかどうか。他者の期待に見合った動きや貢献ができているか。他者とのタイムリーで十分なコミュニケーションを踏まえ、常に自らの言動を律することができているか。そんな視点である。

三点目は、所属する組織が定めた基準による視点である。どのような組織でも決めごとやルールがあり、それらに則って組織は運営される。成員であれば、それらを理解し、遵守するのは当然である。それが自身の欲求とは反するものであっても、あるいは成員の多くが違和感を覚えるものであったとしても、いったんは無視や反故をせず、事後に建設的に修正を図るのが成員としての当然の振舞いである。

四点目は、信仰的視点、普遍的価値の視点だ。一つ目の「自身の欲求」、二つ目の「組織内にいるメンバーからの期待」、三つ目の「組織のルール」がどうであれ、人としてやっていいこと悪いこと、やるべきこととすべきでないことの線引きや節度は変わらない。時代が変わっても、どのような環境変化があっても、普遍的な原理原則というものは存在する。専門性やスキルだけでなく、教養を兼ね備えた人が最終的にうまくいくのは、このような視点がいかに重要かを表している。

最後は、組織外にいる大切な人からの視点である。自分のありようや言動を、家族や恋人や恩師や尊敬する人や、心通じ合う親しい人たちなど、自分にとって大切な人が見たらどう思うか、どう言うかを想像してみるということだ。今の自分は、大切な人からの期待に応えているか、胸を張って自分の仕事や成長についてその人たちに語れるかどうか。内向きにならず、さぼらず、後ろ向きにならず、組織の空気に流されず、自分らしいありようや言動を創り、継続していくためには、組織外にいる具体的な人物の視点から、自らを客観視することは効果的なはずである。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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