「母性的な会社」と「マザコン社員」(【連載16】新しい「日本的人事論」)

画像: waka8

2018.10.10

組織・人材

「母性的な会社」と「マザコン社員」(【連載16】新しい「日本的人事論」)

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

河合隼雄先生は、日本の社会を「母性社会」と呼んだ。ごくかいつまんで言うと、以下のような意味だ。

母親は、自分の子供であれば皆同じように可愛いし、全員に同じように期待する。たとえ成績や素行が悪い子がいても、大器晩成型だと思って期待しつづける。どんな子であっても諦めはしないし、もちろん決して見放したりもしない。子供それぞれの適性や個性や意思に応じて成長すればよいという発想ではなく、自分の子には皆同じような道を同じように歩んでもらいたいと願うし、だから差が生じないようにと同じように扱う。

母親は、場を重視する。それぞれが言いたいことを飲み込み、やりたいことを抑え、場を平穏に保つために、「みんないい子」であることを暗黙的に要求し、何もない平穏な状態を良しとする。場を均衡に保つには、序列も重要になる。兄は兄らしく、弟はそれらしく振舞うようにすることで場が均衡する。タテの関係を作ることで、場が保てるという原則を学ばせる。もちろん、父親も母親が作ったこの均衡の中に取り込まれている。父親は、タテの関係の一員であり、それらしく振舞うことで均衡を保とうとする。父親が家長のように、亭主関白のように見えたとしても、それはあくまで“見せかけ”の強さであり、母親が作り出した場の均衡にとって都合がいいからに過ぎない、

同じように日本の社会では、それぞれが能力や個性の違いを発揮しようはせず、属する組織や場がつつがなくまわっていくように振舞おうとする。個性的な振る舞いや予定と調和しない言動は、自分勝手と評価されてしまうので、皆が抑制的になる。組織や場は、母親が子に対してするように、すべての人を包み込み、すべての人に同じような期待をし、不公平がないよう同じように扱う。場の均衡を保つためにはやはり序列が重要で、年齢や先輩・後輩といったタテの関係が幅を利かせる。抑制的言動を強いられるのはストレスではあるが、一方で、たとえ失敗したとしても、場や組織から切り離されることはなく、いつまでも期待をしてもらえるから安心だ。

これに対して、欧米の社会は「父性社会」であって、生来の能力差や様々な個人差を前提にしており、したがって期待の内容は人によって異なる。母性のように皆を取り込んでいくのではなく、各々に自立を求め、個性に応じて生きよと切り離していく。結果に対しては、信賞必罰を明確に行う。学校に「飛び級」があるのも当然のことであるし、エリートは真のエリートとして(日本のような単なる高学歴者という意味ではなく)、現場の職人はその専門性を活かして、それぞれが個性を活かして自分らしく生きることを求められるから結果として人生は多様になる。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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