受け身型サービスから脱却する(2) 【連載サービスサイエンス:第36回】

画像: Michelle Callahan

2017.06.27

経営・マネジメント

受け身型サービスから脱却する(2) 【連載サービスサイエンス:第36回】

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

受け身型も提案型も苦戦するこれからの時代を勝ち抜くために必要なビジネススタイルの在り方を考えます。

お客様のニーズの変化に合わせてビジネススタイルを変化させなければ、今は受け身型も提案型も苦戦する時代になっていることについて触れてきました。そこで今回は、これから重要になるビジネススタイルである「問題探索型」を実現するためのポイントを見てみたいと思います。

「何が欲しいのか?」ではなく、その背後にある問題や悩みは何かを、お客様と一緒になってひも解いていき、問題の全体像を明らかにしたり、根本的な問題や価値観を見つける。このプロセスをご一緒することで、その後の問題解決など、お客様から選ばれるための信頼関係を築くことができるのです。

例えば、目に見えないサービスを買って頂くために、事前のご相談プロセスを問題探索型に磨き上げて、他社に圧倒的に優位な形で、サービス契約を伸ばしている企業が増えています。また、運用や管理、メンテナンスなどのアフターサービスにおいて、お客様との長いお付き合いの中で掴んだ問題点を顧客サービスの向上に活かすことでリピートオーダーの獲得など、選ばれ続けるための努力に力を注いでいます。このように、提案依頼を受けるのを待つのではなく、問題点やニーズを明確にするためのプロセスから積極的にご一緒することができる企業が、お客様からの信頼を獲得して、ビジネスを伸ばしています。

問題探索型のはじめの一歩は「身内になる」

問題探索型ビジネススタイルを実現するためには、どんなポイントがあるのでしょうか。

はじめの一歩として最も重要なのが「お客様の身内になる」ことです。お客様と問題を一緒に探すためには、お客様に問題点や弱点を見せていただかなければなりません。しかしお客様にしてみれば、身内でもない人に問題点は見せたくないものです。問題探索型のビジネススタイルを実現するためには、いかにお客様の「身内」になれるかが、極めて重要なのです。

ただし、お客様の身内になるといっても簡単なことではありません。

そこで、熱心な企業では例えばこんな工夫をしています。初めてお会いするお客様に対してこれまでは、「いかに商品やサービスを買っていただくか」という観点で提案やキャンペーンに力を入れてきましたが、うまくいかない。そこで、提案する前のプロセスを磨き上げて、お客様との関係を築き、お客様の問題や期待を一緒に明らかにするところからしっかりとご一緒することで、ビジネスを拡大しています。

また、既存のお客様と身内になれるチャンスは、実は営業以上にサービス部隊にあります。例えばアフターサービスであれば、定期的にお客様との接点を持ってるので、既に身内扱いされていて、お客様の悩みや期待を掴んでいることが多いものです。これに気付いた企業では、これまであまり重きを置いてこなかった「サービス」を中心に据えてビジネスをドライブしています。「営業や商品開発の上流工程はサービスである」「サービスは最前線の営業部隊である」「我々はサービス業である」など、サービスを強化することで、お客様に選ばれ続けるための変革に熱心な企業が増えています。

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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