サービスの生産性向上を科学する 【連載サービスサイエンス:第34回】

画像: Vernon Chan

2017.06.13

経営・マネジメント

サービスの生産性向上を科学する 【連載サービスサイエンス:第34回】

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービスの本質を理解してサービスを組み立てることで、価値向上と効率化を両立することは可能です。

日本のGDPの7割を占めるサービス業において、生産性の向上の必要性が高まっています。もちろん日本のサービスの良さのひとつには、効率ばかりを重視するのではなく、心からお客様に喜んでいただきたいという思いで手間を惜しまず温かいサービスが提供できるところだと思います。しかし、サービスも事業である以上は、かけられる人も時間もお金も限界があります。サービス提供者が自己犠牲を払ってでもお客様に何でもかんでもして差し上げるというのは、サービスの価値向上のあるべき姿とは言い難いのではと思います。かといって、提供者の都合で一方的にサービスの一部をやめることは、お客様の不満や不安に繋がり、お客様を失ってしまうことすらあります。サービス改革に熱心な企業ではよく、生産性向上、価値向上、CS向上、顧客志向といった言葉がテーマに挙がります。しかし実態は、それを実現するために、いったい何から手を付けたら良いか分からなくて困っている企業が多いものです。お客様、サービススタッフ、事業の三者が価値を感じるサービスの生産性向上とは、いったいどうしたら実現できるのでしょうか。

まずは、そもそも「サービス」とは何なのか、その本質を理解したうえでサービスの生産性向上に取り組む必要があります。サービスの本質というのは、お客様の事前期待を捉えることです。いくら我々が良かれと思って提供したことでも、お客様の事前期待に合っていなければ「サービス」とすら呼んでもらえません。それはもはや、余計なお世話や無意味行為、迷惑行為と呼ばれてしまいます。我々はお客様の事前期待を捉えなければサービスを提供することすらできないのです。

言われてみれば当たり前に聞こえますが、実は多くの場合、お客様の事前期待はあまり意識できていません。「良いサービスは喜ばれるに決まっている」と思い込んで、勝手に作ったサービスを一方的にお客様に押し付けてしまっているのです。これではお客様に喜んでいただくことはできません。

このように、事前期待を捉えずにアレコレ取り組むのは、目隠しをして的を狙うようなものです。もしかしたら、偶然何回かは的に当たるかもしれませんが、多くは的を外してしまう。せっかくお客様に喜んでもらいたいと思って、手間をかけて取り組んでも、お客様の事前期待に合っていないために、喜んでいただけない。悪い場合には、やればやるほどお客様は離れていってしまうことすらあります。これはであまりにもったいないと思います。

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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