スモール・ジャイアンツから学んだこと

2018.02.28

経営・マネジメント

スモール・ジャイアンツから学んだこと

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

アメリカで「スモール・ジャイアンツ」とよばれる「小さくても偉大な企業」。それらの企業との交流を通して学んだことは「偉大さ」とは規模(売上・頭数)ではなく、肝心なのは市場シェアではなくお客様の心のシェア(マインドシェア)であるということ。



日本だと東京や大阪へのビジネス・リソースの集中がしばしば問題視されていますが、アメリカの「スモール・ジャイアンツ」の事例を見ていると、日本の未来を担うのは「地方」だと強く感じます。それぞれの地域ならではの「味」を活かして個性あふれるビジネスを展開し、地域の住民にとって、「なくてはならない」存在になる。こういったビジネスは日本でももちろん可能ですし、私自身も、そういった日本の「スモール・ジャイアンツ」をこれまでいくつも見てきています。



2)今ふうの業種もあれば、昔ながらの業種もある。「スモール・ジャイアンツ」は業界・業種を問わない



アメリカが最たるものだと思うのですが、20年ほど前に「ネット・ビジネス」が台頭を始めてから、「テクノロジー」を筆頭とした新しい産業に偏った注目が集まる傾向にあったと思います。



しかし「スモール・ジャイアンツ」は、そういった「新しいビジネス」だけに偏ったものではありません。「スモール・ジャイアンツ」の中には、先に述べたようにフード・サービスもあれば、製造業もあれば、コンサルティングのような情報・知識産業もあれば、俗にいう「ネットの会社」もあります。



大きい会社、お金のある会社、話題性のある派手な会社だけが脚光を浴びるような風潮がアメリカにも長いことありました。しかし現実は、誰もがテクノロジーの業界で働けるわけでもなければ、働きたいわけでもありません。子供たちや若者たちが、テクノロジー業界の仕事だけが「カッコ良い会社」という偏ったものの見方を聞かされて育つとしたら、社会としてこんなに乏しいことはないと思います。



「スモール・ジャイアンツ」は、真の意味で「カッコ良い会社」「立派な会社」とはどんな会社か、ということを身をもって教えてくれます。



真の意味で「カッコ良い会社」とは、「世の中の役に立つ」ことに優先順位をおく会社です。例えば、長野中央タクシーは、お年寄りや身体の不自由な人など、「交通弱者」に配慮したサービスを提供し、「お客様の尊厳を守る」ことを事業目的に掲げていますね。だからこそ、地域住民に愛され、圧倒的なロイヤルティをもつビジネスとして自らを確立しているのです。



真の意味で「カッコ良い会社」とは、「働く人思い」の会社です。アメリカでは2000年の初めから二回も大きな不況に遭遇していますが、不況のたびに「人思い」の文化がある会社とない会社とで明暗が分かれます。不況だから、コスト・カットだと思慮を欠いた「人減らし」に走り、働く人の信頼ややる気を破壊してしまう企業がある一方で、働く人たちが「私たちは家族だ」と宣言し、皆で不況を乗り切るために自主的な賃金凍結/カットなどの措置をとったがために会社の団結が一段と強まり、経済が回復するにつれて急速に業績を回復した会社の例はひとつやふたつではありません。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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