/いったんかれらに目を付けられたら、かれらの要求にどう誠実に応じようと、論理的に八方塞がりで、なにをやっても「人類の敵」「人権犯罪者」として「糾弾」の吊るし上げを食らう。狂信者たちは、きみの職を奪い、信用を踏み潰し、きみが泣いて自殺するところまで、きみを追い込む。/
撮影中に中年男優は、いきなり密室に呼び出され、変な若い女弁護士から無理難題を高圧的にふっかけられた。あの女優に話しかけるな、無視するな、近くに寄るな、ともに過ごして自然に振る舞え。おまけに、この命令を人に言うな、だれとも相談するな、って。え? じゃあ、どうすれば、と考えれば考えるほど、わけがわからなくなって、体調を崩し、役を降りたい、と何度も懇願したが、それも許されず、撮影が終わったとたんに、爆弾ハラスメントの昭和オヤジ、と、週刊誌に書き立てられた。これが職場の中高年イジメ、人権侵害でなくて、何なのだろう?
しかし、学校でも、同じことがあちこちで起きている。教室で騒ぐ生徒、クラスメイトや教師に暴力をふるう生徒がいても、その生徒を注意しようものなら、その生徒が逆ギレして、パワハラだなんだ、と言い散らし、校長や教育委員会は、その教師を呼び出して、生徒へ謝罪させ、それでますますその生徒を頭に乗らせ、やがて学級崩壊。そうなると、こんどは、その教師は、教室管理能力が無い、として、また、校長や教育委員会が呼び出して叱責。
ようするに、そういう地雷生徒がいるクラスに当たったら、もうどうやっても、にっちもさっちもいかない。いや、経済格差、学力格差、機会格差だらけの昨今、地雷生徒が一人もいない平和なクラス、学校なんて、いまどき、どこにも無い。おまけに、モンスターペアレントだの、それに心も体もやられた半壊同僚だのも、学校に溢れている。なのに、上は、荒れた現場も見にも来ずに、杓子定規に、いまだにきれいな絵空事の教育論だけを唱えて、教師たちを叱責するだけ。兵士だって、前線で負傷すればすぐ衛生部隊が救護してくれるが、教師は、教室で傷ついても、根性無しとして、むしろ背後から上司に銃剣でブスブスと刺される。いったい、だれが、こんな仕事に就きたがるだろうか。
校長や教育委員会は、長年の師範学校閥に連なってヒラメのように上だけ見て、教育者として現場で生徒たちと向き合うことをおざなりにしてきたのではないか。そして、先輩や同僚の悪事怠慢には目を瞑りつつ、正義面をしてツケはすべて現場の教師たちに押しつけ、自分たちの保身だけを図ってきたのではないか。それは、あのテレビ局とまったく同じ構図だ。
しかし、ダメなのは、もはや学校やテレビ局だけではない。こういう異様な教育環境で増長した若者たちが社会に出て、企業に入って、自分の「人権」を盾に、一方的な「配慮」を周囲に強要して、我が儘放題を言い散らし始めている。なにしろ、天下の「人権」さまたちだ。だれもかれらを抑えることなど許されない。それどころか、かれらの背後には、「造反有理」の赤い旗を掲げた弁護士たちや運動家たち、そしてマスコミや野次馬が群がっている。連中は、死肉に群がり、骨まで貪ってのしあがったプロのポルポト的プレデター、現代のサヴォナローラ。
いったんかれらに目を付けられたら、かれらの要求にどう誠実に応じようと、論理的に八方塞がりで、なにをやっても「人類の敵」「人権犯罪者」として「糾弾」の吊るし上げを食らう。連中に取り憑かれたら、もはや助かる道は無い。狂信者たちは、きみの職を奪い、信用を踏み潰し、きみが泣いて自殺するところまで、きみを追い込む。だから、こっちができることと言えば、早く逃げること、降りること、辞めること。深手を負わされる前に、ヤバそうな地雷や狂信者たちが吹き溜まっている現場との関わりを自分のほうから断って身を引くほうが、たとえ職を失っても、心と体の平安を保ち、命を永らえることができるのではないか。
純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、東京大学卒(インター&文学部哲学科)、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元東海大学総合経営学部准教授、元テレビ朝日報道局ブレーン。
解説
2025.09.08
2025.09.11
2025.09.21
2025.10.05
2026.05.24
2026.05.28
2026.07.04
2026.07.09
2026.07.17
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。
フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る