飲食店での現金取り扱いに潜むリスク

画像: Franklin Heijnen

2016.10.19

経営・マネジメント

飲食店での現金取り扱いに潜むリスク

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

北欧および北米で非現金決済へのシフトが急激に進んだ理由は、セキュリティとコスト、そして衛生面だ。特に最後の理由は潔癖症大国・ニッポンでも無視できないものになろう。

例えばノロウィルスなど強力な感染力を持つウィルスや細菌の保有者が触った硬貨を受け取った人が、その手で自分の鼻や口を触ったら簡単に感染してしまうだろう。その硬貨に触った従業員が調理または配膳した料理品を食べたお客が食中毒になる可能性は決して低くない。飲食店としては食材の調達・調理の際の殺菌には万全を期しているのに、とんだ抜け穴がぽっかり空いているようなものだ。

飲食店経営者とすると気になるだろうが、現実問題として対処できるのだろうか。レジ対応専門の従業員を置ける店などというのは今どきほとんど無い。取分けする際にはビニール手袋をして、お勘定をする際には素手で、といった区別をしている「中食」店を見たことも何度かあるが、ビニール手袋をいちいちはめたり脱いだりするのが面倒そうなのと、その際に手袋を素手であちこち触っているので無意味だと感じる。

それ以上に有効なのは、やはり現金の取り扱いを極力抑え、カードや電子マネーで支払ってもらう体制に早く持っていくことだろう。実際のところ日本の大都市では、(クレジットカード端末に加えて)電子マネー用決済端末を設置している店舗が世界的に見ても多いと感じる。そしてその利用率は着実に上がっているらしい。つまり機運はあるのである。

非現金決済のさらなる普及度向上に向けての一番の障害が店舗にとってのクレジットカード手数料の高さだろう。大型小売店で3~5%、飲食チェーンで4%~(一般小規模店なら5%~が多い。遊興施設や風俗施設では10数%に跳ね上がるらしい)とされ、国際的に見ても随分高い水準だ。

最近は小型カードリーダーを使うモバイル型カード決済や電子マネー決済が普及し始めて手数料の値下げ圧力が強くなっているとはいえ、まだまだ割高なのは間違いない。主な要因の一つとして、クレジットカード決済時に利用するCAFISというクレジット情報照会サービスの利用料の高さも指摘される。関係者のさらなる努力を期待したい。
Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

世界的戦略ファームのノウハウ×事業会社での事業開発実務×身銭での投資・起業経験=実践的な創業の知見を誇ります。 ✅足掛け35年超にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクト=PJを主導 ✅最近ではSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)PJの一つを支援 ✅以前には日越政府協定に基づくベトナム・ホーチミン市での高速都市鉄道の計画策定PJを指揮  パスファインダーズ社は少数精鋭の経営コンサルティング会社です。事業開発・事業戦略策定にフォーカスとした戦略コンサルティングを、大企業・中堅企業向けにハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は中小企業向け経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。特に後継経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/       

フォロー フォローして日沖 博道の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。