「犯人探し」に明け暮れるマスコミおよび都議会は、論点のズレと優先度の取り違えに気づかずに「釈迦」の手のひらでしばらく踊り続けるだろうが、企業社会でも同様の迷走が起きることはままある。
しかしこうした悪質とも言える「意図的な」ものよりもある意味厄介で、一般の企業で日常的に生じやすいのは、関係者の大半が真摯に取り組んでいながら生じる、「意図せざる」論点のズレ、そして優先度の取り違えである。
具体的にはどういうものか。例えば経営陣が海外での投資案件を評価する場面を想定して欲しい。一般の事業系企業なら、自社の中長期ビジョンとの整合性を最初に徹底的に確認した上で、当該案件が持つ事業収益性やリスク、その前提たる仮定といった詳細について検証を行うといった段取りで進むべきである。ところが実際の場面では往々にして、どうしても目に付く収益性やリスクの議論が先行しやすいものだ。
経験豊富な企業経営者ですらそうした傾向が拭えないのだから、一般の企業人が慣れない新規事業の検討や既存事業の見直しのプロセスにおいて、論点のズレおよび優先度の取り違えを「意図せずに」起こしてしまうことはそう不思議ではない。
新規事業開発・推進をお手伝いするコンサルタントとして我々は、それまでの社内だけでの事業構想検討が散々迷走した挙句に相談されることも少なくないのだが、よく訊いてみると論点整理をしないで議論を進めてきたことが大きな要因であることが多い。
その時点で気になる論点をモグラ叩きのように追いかけて一巡してしまい、結局はどうすれば前に進めるのか分からなくなってしまう。または、最重要な論点を置き去りにしてテクニカルな側面だけを議論し続けていたので全体的検討が大して進んでいない、等々である。
我々コンサルタントはファシリテータ役としてこうした論点整理をプロジェクトの最初および途中で何度も行い、議論が迷走したり優先順位を間違えたりしないようサポートするのが重要な役割の一つである。
そんな我々でも手こずることが時にはある。検討を進める中で既に決着した論点に関し、当初の想定だが結局却下された方式を前提に技術者サイドで技術検討と費用見積がされており(純粋な勘違いである)、気づかずにいたらとんでもない混乱に陥ってしまったかもと冷や汗をかいたこともある。
相当昔のひどい話だが、プロジェクトの途中成果が自説に固執する事務局メンバーによって勝手に一部書き換えられていたことすらある(気づいて修正したので事なきを得ているが…。最近の「豊洲盛り土問題」を彷彿させるエピソードではある)。
「意図的」なものか、そうではなく「うっかり」なのか。いずれにせよ、神ならぬ人が行う所業である。論点のズレ、そして優先度の取り違えというのはどんな組織にも無縁ではない。虚心坦懐に「本来の目的・あるべき姿は何か」を踏まえ、論点整理をしながら議論・検討を進めていただきたいものだ。
経営・事業戦略
2013.06.05
2015.12.17
2016.05.25
2016.07.13
2016.10.12
2016.10.19
2017.01.11
2017.02.15
2017.03.22
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
世界的戦略ファームのノウハウ×事業会社での事業開発実務×身銭での投資・起業経験=実践的な創業の知見を誇ります。 ✅足掛け35年超にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクト=PJを主導 ✅最近ではSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)PJの一つを支援 ✅以前には日越政府協定に基づくベトナム・ホーチミン市での高速都市鉄道の計画策定PJを指揮 パスファインダーズ社は少数精鋭の経営コンサルティング会社です。事業開発・事業戦略策定にフォーカスとした戦略コンサルティングを、大企業・中堅企業向けにハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は中小企業向け経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。特に後継経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/
