コンセプチュアル思考〈第10回〉 「客観」を超えて「主観」を研ぎ澄ませよ

画像: Career Portrait Consulting

2016.06.17

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第10回〉 「客観」を超えて「主観」を研ぎ澄ませよ

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ


◆自らの解釈が自分の生きる世界を決める
では、実際の研修(ワークショップ)で出てくる答えにはどのようなものがあるか見ていただきましょう。以下の答案例は、「仕事とは何かを自分の言葉で定義せよ」というワークで行なったものです。


これらの答えはその人なりの深い咀嚼がなされた文言です。いずれも客観を超えたところで意志的につくり出している表現になっています。客観的定義とは世の中の多くの人が定義する最大公約数的な部分のことで、いわば辞書的な定義です。この最大公約数の部分で物事の解釈を行なうことは間違いがないという意味で安全ですが、別の角度から言えば没個性に陥ることでもあります。



表層的な決めつけや感情的な偏見ではなく、深い思考から出る傾きであれば、それは独自性としてむしろ研ぎ澄ませていくべきものでしょう。「この世界に事実というものはない。ただ解釈があるのみ」とニーチェが言ったとおり、私たちは結局、自らの解釈で自分の生きる世界を決めているからです。

松下幸之助は「(松下電器産業にとって)事業とは人づくりである」と言いました。また本田宗一郎は本田技術研究所の社長に就任した際、「(ここでの)事業は、どういうものが“人に好かれるか”という研究である」と言いました。いずれも主観的・意志的な定義です。決して、「事業とは一定の目的と計画とに基づいて経営する経済的活動」(『広辞苑第六版』)といった辞書的な言葉ではありません。

客観を土台として、それを超えて主観の答えを抱く。その思考態度から、独自の仕事が生まれ、たくましくキャリアを切り拓いていく力が生まれます。直面する物事に対し、力強い自分なりの解釈を創造する―――それは言い換えるなら、図太い観を醸成するということですが、これは知識やスキルを身につけることより根っこの次元で重要なことです。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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