介護スタッフの処遇と業務の改善こそが人手不足解消の鍵(前編)

画像: Roger Blackwell

2016.03.23

経営・マネジメント

介護スタッフの処遇と業務の改善こそが人手不足解消の鍵(前編)

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

介護施設増への最大の障害は人手不足。そのボトルネックは「離職率の高止まり」と「低い応募率」の2つだ。なぜそれらが継続し、簡単に解消されないのか。この問題の根深さをきちんと把握することなくして正しい解決方策は見出せない。

その上でダメ押しともいえる要素が、④職場の人間関係が悪いことだ。背景にあるのは「職場崩壊」の構図である。キツいのに低い給与→一部の離職→人手不足でギスギスした職場で、「他に移れない」先輩がデカい面→さらに離職が進む、といった悪循環が多くの職場で生じており、「離職率の高止まり」を継続させていると推察される。

次にもう一つのボトルネック「低い応募率」が続く原因を探ろう。つまり「なぜ人は介護業界への就労をためらうのか」ということである。考察のため、4グループに場合分けしたい(図表)。

第一はほとんど就業経験のない「新卒組」。第二は他業界で就業経験のある「転職組」。第三は以前に介護業界で働いており、子育てなどの自己事情で辞めたが事情が緩和されて復職を考えている「手離れ組」。最後が、前の職場への不満などで離職したが、この業界への復帰を考えている「復職検討組」だ。

「新卒組」が就職先の判断材料とするのは、就職関連本や雑誌およびネット上にある断片的な業界情報、同世代の友人の意見、あと重要なのは両親の意見であろう。「転職組」の場合には同様の断片的な業界情報に自らの社会常識が加わり、両親の影響力は大いに低下しよう。しかし身近に介護業界の人がいない限り、いずれも伝聞情報に基づくことには違いがない。

「新卒組」の場合、「やりがいを感じる」職業として当人がその気になっても、両親が断念させることも少なくないとされる。「転職組」の場合にも、一家の大黒柱として働くことを考えると最終的な選択肢としては残らないという意見もよく目にする。なぜか。

介護の仕事に「低賃金で重労働」とのイメージが強いことが主要因であろう。内閣府の「介護保険制度に関する世論調査」(平成22年)によると、「介護職のイメージ」のネガティブな面としては「夜勤などがあり、きつい仕事」「給与水準が低い仕事」「将来に不安がある仕事」の3つが高い割合を示している。これが世間一般の、介護職に対する偽らざるイメージだろう。

売り手市場になった今、そんな職場を選んでくれる奇特な人たち、そして選ばせる家族は多くない。介護業界に関する正確・詳細な情報が不足している「新卒組」と「転職組」ではほぼ共通して、こうした世間一般の持つネガティブなイメージがボトルネックになっていると推察される。

そして実態の多くもそれに近いため、なかなか解消に向かわないのである。大半の施設において介護職には夜勤がつきものだ。排泄物の処理やおむつ替えなどの「下の世話」も多くの職場において日常業務の一環である。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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