社会インフラを考える (5) ガラパゴス化したインフラ輸出は無理

画像: Takuma Kimura

2014.04.07

経営・マネジメント

社会インフラを考える (5) ガラパゴス化したインフラ輸出は無理

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

官民こぞってのインフラ輸出熱にもかかわらず、今の日本の道路インフラ・パッケージを買ってくれる国はない。冷静に各国のニーズと受け入れ態勢を見極め、必要な機能をコンパクトにまとめる「再パッケージ化」の努力が不可欠だ。

その結果、そのまま海外に輸出しようとしても、標準化不足で過剰仕様ゆえ割高過ぎるため、各ベンダも道路事業者も苦戦が続いている。高速道路を除いた国道・県道・一般道も、先に挙げた付帯設備の一部が不要になる代わりに信号や標識が過剰気味に装備されるせいもあり、その建設・維持コストは巨額となりがちだ。

ここまでの「ガラパゴス化」事情の説明を聞かれて、「どこかで聞いた話だな」と感じた方も多いだろう。そう、通信業界とよく似ている。通信キャリア側が独自仕様をあれこれ企画・指定してメーカーに作らせた携帯端末は、高機能ではあるがあまりに特殊・過剰仕様で、海外に輸出しようとしても価格的に全然太刀打ちできなかった。いわゆる「ガラパゴス・ケータイ」だ。同じ構造が日本の道路インフラの輸出を困難ならしめているのだ。

日本の道路建設コストは欧米の2倍以上とされる。一時期、財務省や民間から「日本の道路事業費は世界的にみると異常に高く、数倍する」といった主張が相次いだ。それに対し国土交通省は、日本の道路は地震・治水対策が必要なのと橋やトンネルが多いためにコスト高になっているのであって、同じ仕様なら(人件費や土地収用費を除く)純粋な建設コストの内外価格差はほとんど無いと主張している。

でも雑誌SAPIOによれば、一般国道(4車線)でも1m当たり300万~400万円もかかっているということだから、建設方法自体と装備施設に割高要因があることは否めない。欧米諸国に対してですら割高なのだから、新興国や発展途上国に対してはお話にならないレベルだということだ。

小生はある仕事で高速道路事業者の方にインタビューしたことがある。その方も、日本の道路システムを海外に輸出するにはこのコスト差を大幅に縮める努力が不可欠であること、その要因の一つが過剰設備・過剰仕様(特に最先端技術を詰め込むこと)であることを認めておられた。

また、ある東南アジア主要国の交通行政担当官もやはり、日本の道路インフラ輸出の最大の壁は割高な建設費であり、その原因は過剰設備・過剰仕様であると指摘していた(中国の道路建設会社の提案では数分の一になると聞かされているそうだが、これはこれでどこまで信用できるのか不安もあるそうだ)。

また、高機能な日本の装備を政府援助で与えられても、保守する技術者の確保や補修部品の調達が難しいため、故障や破損が起きるとそのまま放置されて「宝の持ち腐れ」になってしまう途上国も少なくないと指摘する国際援助関係者もいた。

ここから明らかなのは、日本の道路事情に最適化した仕様・装備の「道路システム」パッケージを持ち込むのではなく、相手国のニーズや受け入れ態勢に合うように仕様と装備内容を見直し、枯れた技術と、現地で調達できる部材や部品で再構成、再パッケージしないといけないという、極めて当たり前の努力が必要だということだ。

これは道路に限る話ではなく、電機製品などその他の製品輸出で繰り返し指摘されてきたことと通じる。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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