対照的な“対等合併”ケースにみる経営戦略(後編)

画像: Spidertrax Off-Road

2013.12.24

経営・マネジメント

対照的な“対等合併”ケースにみる経営戦略(後編)

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

今年は日本企業が絡む、注目すべき2つの国際的合併ケースが発表された。東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズ、森精機と独ギルデマイスターだ。そのアプローチは対照的だが、どちらも“対等合併”を目指し、関係者が熟慮したことが窺われる。後者の組み合わせにおいては、特にその慎重さに注目したい。

さらにこの9月に森精機のギルデ株保有比率が24.9%を超えることになったので、欧州の独占禁止法で両社は競争関係にあるとみなされなくなり、経営などに関する情報共有の制限が取り除かれた。これで共同開発や製品ラインの統合が本格的に進むだろう。さらに、ほぼ毎月開かれる共同経営協議会という場で、役員間で情報共有を行う方針だという。

いわば婚約、同棲と進んできた両社は、このあと事実婚を6~7年ほど続けてから籍を入れると宣言したようなものなのだ。つまり段々深い付き合いをしてみて大きな違和感がないことを確かめながら、抜き差しならない関係になることを互いに納得できるよう、実に慎重にプロセスを重ねているのである。この6~7年の「事実婚」の間によほど深刻な「性格の不一致」が見つからない限り、この長期にわたる統合プロセスが破たんする可能性は低いだろう。

半年で結論を出して統合プロセスを急ぐ東京エレクトロン-アプライドマテリアルズのケースに比べ、この森精機-ギルデマイスターの場合、経営統合の判断だけでなく統合プロセス自体に極端に長い時間を掛けることには賛否両論があろう。しかしこれはどちらが正しいとか間違っているとかいう話ではない。それぞれの経営者が個別事情を踏まえて熟慮し判断していることは、色々な情報から察することができる。周りはこの2組のカップルを温かく祝福してあげたいものだ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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