「看板に偽りあり」はなぜ繰り返されるのか?(前編)

画像: Alissa Walker

2013.11.07

経営・マネジメント

「看板に偽りあり」はなぜ繰り返されるのか?(前編)

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

外食産業や有名ホテルで次々に明らかになる偽装表示。冷蔵・冷凍輸送のはずが常温になっていた一部の宅配便。いずれも本質はコンプライアンス問題である。信頼してくれた消費者を欺く行為であるという認識を組織内に浸透させることができるかが問われている。

すると何かの拍子に、メニューに表示している食材より格段に安いものを使う誘惑が目の前をちらつかない仕入担当者は少数派だろう。

問題は、実際に安い食材に切り替えるなら、同時にメニューの表示を変えるまで組織として動いているか、である。メニュー表示はお客に対する「店のマニュフェスト」なのである。

これはいわゆるコンプライアンス問題である。そしてコンプライアンスというのは、顧客の信頼を裏切っていないか、社会に後ろ指を指されることがないか、組織人の誠実さと倫理観が問われる問題なのである。

経営層と管理職が普段から口を酸っぱくして具体的に「こういったことをやったら、うちはアウトだよ」と言い続けていないと、なかなか普通の従業員は真剣に考えない類の話なのである。

食品業界が偽装問題で大騒ぎになったのは2007年であり、それを他山の石として自らを省みる時間は十分過ぎるほどあったはずだ。残念ながら、今回問題が表面化している外食企業では、経営者にそうした問題意識は薄かったのではないか。

ところで、テナントのレストランや総菜店に偽装表示が見つかったからといって百貨店を非難する報道はおかしいと思う。百貨店がテナント店のメニューや食材をいちいちチェックするようにしていたら、とんでもないコストアップになろう。それを負担することになるのは、結局は消費者だ。

ヒステリックにならず、社会的に妥当な改善への方向性を示すのがジャーナリズムの仕事のはずだ。

「看板に偽りあり」はなぜ繰り返されるのか?(後編)に続く

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

世界的戦略ファームのノウハウ×事業会社での事業開発実務×身銭での投資・起業経験=実践的な創業の知見を誇ります。 ✅足掛け35年超にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクト=PJを主導 ✅最近ではSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)PJの一つを支援 ✅以前には日越政府協定に基づくベトナム・ホーチミン市での高速都市鉄道の計画策定PJを指揮  パスファインダーズ社は少数精鋭の経営コンサルティング会社です。事業開発・事業戦略策定にフォーカスとした戦略コンサルティングを、大企業・中堅企業向けにハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は中小企業向け経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。特に後継経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/       

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