​写真芸術に敬意を!:トレパク「絵師」の思い上がり

画像: マリリンのディプティック

2022.02.01

ライフ・ソーシャル

​写真芸術に敬意を!:トレパク「絵師」の思い上がり

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/模写しても、トレスしても、その魅力の根源は、写真家とモデルが切り結んだ創造的セッションに凝縮されており、模写やトレスの加工にあるのではない。だから、模写者やトレパクラー、イラストレーサーが、それを自分の「作品」だなどというのは、あまりにおこがましい。/

まただよ。それも、シロウトがちょこっとネットで稼いだ程度ならともかく、恥ずかしげも無く国内外で個展まで開いて、作品集まで出版していやがる。パクラー本人は論外ながら、審美眼という意味で、この出版社も「芸術」を名乗る資格を疑う。

とにかくソフトが、おそろしく良くなった。CLIP STUDIO を使えば、補正が効いて、初心者でもベテランのような流麗な線が画ける。それどころか、トレスなどしなくても、写真からマンガタッチの線画も一発自動で起こしてくれ、トーン張りまでやってのける。おまけにRGBベースだから、印刷では特色として高価だったポップな蛍光色がガンガン使える。塗りの修正も簡単。

商業誌にも問題があった。さすがに写真の丸パクは忌避されるようになったものの、現行でも海外ファッション誌などからのポージングのパクリが当たり前のように出ていて、これまた恥ずかしげも無く、それを作者がウリにしていたりする。これらが売れる、人気が出るのは、発表者の芸術的な力量ではなく、写真そのもの、モデルそのものに芸術的な魅力があるからではないのか。

これらのパクリ問題の根本には、日本で写真やコレオグラフ(ポージング)の芸術性が理解されていない、ということがあるようだ。たしかに、近年の高性能カメラなら、シロウトがシャッターを切っても、深度を浅くして遠景や近景をぼかしたりした、それらしいものがうまく撮れる。だが、それで芸術作品の域に達するか?

写真は、フォトグラフ、光で描くものであり、コレオグラフは、コーラスと同じ語源で、身体表現を意味する。プロの写真家、プロのモデル(コレオグラファー、振付師)は、かならずしも自分自身でカメラを操作すること、被写体となることを要しない。モデルで重要なのは、なにをどう表現するか、であり、写真家で重要なのは、なにをどう捉えるか、である。その相乗効果があってこそ、そこに強い情感の込められた写真の芸術性が成り立つ。

この後、この芸術的写真を、シミュラークルとして、拡大しようと縮小しようと、雑誌媒体に載せても、写真集にしても、その芸術性の魂は魅力を放つ。模写しても、トレスしても、その魅力の根源は、写真家とモデルが切り結んだ創造的セッションに凝縮されており、模写やトレスの加工にあるのではない。だから、模写者やトレパクラー、イラストレーサーが、それを自分の「作品」だなどというのは、あまりにおこがましい。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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