一見、戦略的な人材育成の危うさについて。

2011.05.06

組織・人材

一見、戦略的な人材育成の危うさについて。

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」研究員/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

あるべき人材像や必須スキルを掲げて、社員にその習得を求めるような人材育成で、いいのだろうか?

人材育成に当たって、組織として目標を掲げて(階層別・職種別に必要なスキルや人材像を定めて)、研修やマネジメントを行うのは大切なことです。思いつきで研修を実施してみたり、育成を現場の上司の考えややり方に、任せきりにしてしまったりするよりは、戦略的な人材育成であると言えます。

ただし、そのように一見すれば戦略的な人材育成への取り組みが、組織の強化につながっているのかどうか、事業環境や顧客・市場の要請などにマッチしているのかどうか、については冷静に考える必要があります。

人材育成も教育研修も、その言葉には「未熟な人を引き上げる」「分っていない人、出来ない人に施す、授ける」といったニュアンスがあり、組織としては、内部的な弱い部分に焦点を当てた施策として位置づけられていることが多いものです。だから、何年目でこのようなことを学び、昇進・昇格時には、その階層に相応しいスキルや視点を獲得するように促し、職種によって一律のスキルや知識の習得を義務付ける、といったことをパッケージにしたような研修体系、底上げ型の仕組みを作りがちになるわけですが、それが本当に効果的かどうか、組織のパフォーマンスを高めていっているのかどうかという問題です。

ドラッカーは、「自らの強みに集中せよ」と言っています。その意味の一つは、「組織のメンバーが似たような強みを持っているのは、外から見れば弱みがある状態」であり、「各々が異なる強みを持っているのが、外から見れば弱みがない状態である」ということ。もう一つは、個人も組織も、苦手や弱みを普通レベルや得意となるまで引き上げていくことはとても難しいのだから、強みを更に伸ばすほうが効果的である、ということです。

言い換えれば、外から見て強い組織には多様性がある(各々が異なる強みを持っている)、また、弱みを克服させるより、各々の強みを伸ばすほうが(同質性を追求するより、多様性を実現するほうが)容易である、ということです。

このドラッカーの指摘とは関係なく、現在の組織・人事における重要なテーマの一つとして、「多様性」を挙げることができます。顧客の要望や組織に向けられる視点が多様化しているのだから、人材も多様化する必要があるのではないか。あるいは、社会・顧客に適合するためには変革や創造が重要で、それには多様な視点と能力を交わらせ、組み合わせることが必要ではないのか、といったテーマです。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」研究員/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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