天下のウォルマートも苦戦する「アマゾン・ファクター」

2011.02.23

経営・マネジメント

天下のウォルマートも苦戦する「アマゾン・ファクター」

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

米国第二位のブックストア・チェーン、ボーダーズが会社更生法による保護を申請。「業界第二位」でも倒産に追い込まれる市場波乱の背景にはアマゾンの影あり。そして、天下のウォルマートも無傷ではない・・・。

そして、本日の報道によると、なんと、天下のウォルマートも無傷ではないというのです。

ウォルマートの業績発表を見てみると、米国内の既存店舗売上は過去二年間連続で減少傾向にあります。そして、その要因のひとつは、「価格リーダーシップの揺らぎ」であるというのです。

「エブリデイ・ロウ・プライス(EDLP)」という革新的な戦略で、同社を「小売業の王者」として育て上げたサム・ウォルトンが聞いたら、さぞかし嘆くことでしょう。

アメリカの大手金融会社ウェルス・ファーゴが行ったアマゾンとウォルマートの価格比較スタディによると、複数商品カテゴリーを横断したウォルマートの平均価格は、アマゾンに比べて19%ほど「高い」という結果が出たということです。勿論、この数値は、「アマゾンの顧客はセールス・タックスと送料を払わないものとして計算する」ということが前提となっているようですが。しかし、送料を考慮に入れて計算しても、両社の間には依然として9~10%程度の価格格差が存在するということで、これが、「ウォルマート=価格リーダー」という神話をもろくも打ち砕くものであることは明らかです。

先ほど、「カテゴリー・キラー・キラー」という言葉を出しましたが、アメリカの80年代は、「カテゴリー・キラー」という新業態や、ウォルマートなどのマス・ディスカウント・ストアが開花した時代。豊富な品揃えと低価格を武器に、多くのパパ・ママ・ストア(個人店舗)を倒産に追い込みました。「天下無敵」と思われたカテゴリー・キラーも、時代の流れには勝てず、アマゾンのようなまさに「ミュータント的プレイヤー」を前にビジネス・モデルの見直しと自らのパラダイム・シフトを余儀なくされている・・・。「世界最大の小売業者」もあぐらをかいてはいられないのだ・・・ということを改めて認識させられたニュースでした。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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