人事考課では、「評価の目線」を揃えてはいけない。

2010.02.15

組織・人材

人事考課では、「評価の目線」を揃えてはいけない。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「評価の目線がバラバラ」は、本当にダメなのでしょうか?を考えてみましょう。

例えば人事評価で、彼のこの半年の働きを何点とするか、あるいは彼を昇格させるかどうか、例えば採用面接で、彼を採用とするか不採用とするか、といった評価を行う場合、その評価に参加する人達の意見や考え方に相違があるのは困りものだ、と考える人が多いようです。だいたい、評価の主催者は、評価に参加する人の目線を揃えたい、評価の観点や基準を統一したいと言います。評価者研修を実施したいと考えるのは、「評価の目線がバラバラ」なのはマズイという認識からです。

評価する人によって意見が異なっていると、議論や調整が必要で結論を得るまでに時間がかかってしまうし、そのプロセスで余計な組織の力学に巻き込まれて面倒になる。この点で、評価の主催者(事務局)が困るという気持ちは分ります。評価する対象があり、その評価に参加する人が集まってきて、「せーのっ」でフタを開けたら意見が同じであれば楽に違いありません。評価を効率化したい、そのためには評価する目線がバラバラでないほうが良いということです。

しかしながら、評価者の目線、つまり評価の観点(どこを見るか)・基準(どのレベルで良しとするか)が揃うことには問題もあります。どこがどの程度良い、どこが良くない、こうしてもらいたい、こうなってもらいたいという意見が議論せずとも一致しているということは、皆が一様に、それも暗黙のうちに同じモノを求めているということです。つまり、その「評価者がかけている同じようなお眼鏡」にかなわない人は入れないし、育ちもしません。異質の排除です。これを続けていくと、人材の多様性が失われていくことにつながる可能性があります。

評価の目的は、短期的には「配分(給与・賞与)の決定」「役割(昇進・昇格)の決定」「育成」「動機付け」です。評価の結果によって配分や役割を決め、評価の内容や伝え方によって成長を促し、モチベーション向上を図ります。

忘れられがちなのは、中長期的な評価の効用もしくは影響です。それは、評価が人材を規定していく、どのような評価をしているかはどのような人材が揃うのかに大きく影響するということ。被評価者が評価されたいと思うのは当然で、だんだんと高い評価を受けやすい言動をとるようになっていきます。逆に、評価されないことはしないし、そういう評価に合わない人は去ることになります。統一された視点による画一的な評価は、組織や人材をそのようにして規定していくわけですが、それで良いのかどうか。バラバラ目線による多様な評価は、悪いことでないばかりか、組織の未来にとって重要ではないかと考えます。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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