商社マン しんちゃん。 走る! (32)

2009.10.28

営業・マーケティング

商社マン しんちゃん。 走る! (32)

三宅 信一郎
株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。

カーテンの上からは点滴のようなビンらしきものがつるされている
のが見えた。

その中には日本人らしき人が横たわっているようであった。

白いカーテンの外側から日本人ビジネスマンらしい人が中の人に呼
びかけていたのであった。

隣の席の内村技師が宮田にささやいた。

「宮田さん。どうも日本人ビジネスマンの怪我人があそこに寝てい
 るらしいですよ。
 現在、イラク国境近くのアフワーズ(バスラ)というところで、日
 本の円借款を使って、立日製作所さんが伊藤物産と組んで火力発
 電所を建設しているのですが、その建設現場に昨日イラク戦闘機
 の爆撃があったらしく、立日さんの技師が重傷を負ったらしいの
 です。

 その方を日本まで急遽送り返そうとしているようです。
 隣で励ましているのは恐らく伊藤物産の社員じゃないでしょうか」  

宮田は昨日のゴルフの最中に鳴った空襲警報を思い出していた。
あの最中に恐らく爆撃がなされたのだろうと思うととても他人事の
ように感じられなかった。

目の前で日本人ビジネスマンがうめいている状況を見て、皆命がけ
で仕事をしているのだなと思った。

それから1時間後、やっと飛行機は日本に向けて離陸した。

離陸直後、眼下には民間航空機より戦闘機や爆撃機の数のほうがは
るかに多く並んでいるテヘラン空港が一望できた。

宮田は段々小さくなりつつあるテヘランの町に別れを告げ、一路平
和な日本に向けての帰路についたのであった。

帰路、何時間たって突然機内で拍手が起こった。

となりに座っていた、これからソウルオリンピックに出場するため、
イラン代表であるという、超どデカイ柔道選手に拍手の理由を聞い
たところ、たまに、エベレストを超えることができずに引き返すこ
とがイラン航空ではおこると。

今回は無事越えたので拍手が起こったのだと。

 < エー加減にしてーな。 それぐらい、越えて―な・・・ 
   なんやねん。この航空会社は。 頼むで。 ほんま・・ >

その後順調に飛行は進んで行った。

ただ、ある時間になると、飛行機の中の丁度トイレの前の小さな広
場におびただしい人が集まって、次々に恐らくメッカの方向を向い
てであろう。 
土下座するような格好でお祈りをし始めるのであった。

 < あー、これはほんまにイスラムの飛行機や・・・ >

大日本商事宛に、アロイコから内示発注書の連絡が届いたのは、宮田
が帰国してから3週間後のことであった。

次号に続く。

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三宅 信一郎

株式会社BFCコンサルティング 代表取締役

事業力強化・新規事業開発・創業支援コンサルタント 自動認識基本技術者 (JAISA:(社)日本自動認識システム協会)認定

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