新型インフルエンザ対策は「働き方の見直し」から

2009.03.31

経営・マネジメント

新型インフルエンザ対策は「働き方の見直し」から

荒川 大

パンデミック対策の実務者向けマニュアルを提供している時に、もっとも気になるのは「集まって仕事をする」というスタイル。この点を解消すれば、無用な感染は避けられるとも考えられます。

企業の人的リスクマネジメント対策を指導する中で、不景気を乗り切るためには「組織的な結束」が大切だとお話しする機会が多いのですが、今回は、同じリスクマネジメントでも新型インフルエンザ対策としての組織のあり方を書いておきたいと思います。

新型インフルエンザは、名称こそインフルエンザですが、一度発生すれば、誰も抗体を持たない病気ですから、歴史の教科書で習った中世の「ペスト」みたいな感じで伝染し、患者を急増させる恐ろしい病気とも言えます。逆に、飛沫感染や飛沫咳感染で伝染しますから、感染者の近くに寄らなければ、また感染者と一緒に閉鎖空間にいなければ、感染するリスクは下げられるとも言えます。

ここでの問題は「潜伏期間」で、一般的には1日から3日と言われています。
感染者になってから発症するまで、抵抗力の強い人であればそれなりに時間がかかるということですので、その間に感染者を増やすことになるというのが、電車やオフィス内での感染拡大の重大な背景(リスク)となります。

そこで、新型インフルエンザ対策を考えるときに必要となる「事業継続性」ですが、ポイントは「本当に社内でやらなければならない仕事は何か?」ということをきちんと洗い出すことだとお伝えしています。

当社の実務者向けのマニュアルの中でも、特に注意頂きたいこととして記載しているのが、このポイントですが、パンデミック時の公共の交通機関での通勤はかなりのリスクになります。社用車があるとか自家用車の通勤を認めている会社には、電車通勤の禁止や時差出社、またやむを得ず移動に公共の交通機関を活用する場合には、N95マスクの徹底をお話ししています。

さて、では通勤しないで仕事ができるのかということになるのですが、通勤しないで勤務する必要性は2つあります。

1.感染経路を減らすことで、社内勤務(重要業務従事)社員を守る
2.感染させないことで、社内勤務者の発病時のバックアップとする

新型インフルエンザ対策の重要な点は、地震のように全てを壊すものではなく、人間以外の物質的な資産は全て正常に稼動しているということ。そして、発症の状態が地域や企業によって均一ではないため、経済全体は停滞はしても活動を休止しないということ。

社員が連帯感を持つために最も大切な職場環境ですが、新型インフルエンザ対策を考える場合には、その連帯感を崩さないために、新しい働き方やその結果生まれるリスク(機密漏洩/情報漏えい等)を早急に社員へ教育する必要も出てきます。

最後に、新型インフルエンザ対策の成否によって、沈静化した後の企業の復旧レベルに格段の差が生まれます。サービスを停止してしまうリスクを負う前に、会社が顧客へ質の高いサービスを提供し続けられることを示すためにも、この対策は必要になるのかもしれません…。

個人的には、求人数も減っているIT業界が盛り返すためにも、在宅勤務を中核とする社内の業務見直しのテーマとして取り組んで頂きたい対策でもあり、またタミフルの備蓄数で話しが止まっている国の新型インフルエンザ対策として、対策を進める企業への助成もお願いしたいところです。

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