2026.02.28
『知能の暴走と知性の未熟』 〜AI時代の「捕食者」から人類を守るための進化論〜
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
歴史を振り返れば、人類史上最悪の惨劇の多くは、単なる「悪意」によってではなく、ある種の「正義」や「大義」の名の下に遂行されてきた。 独裁者、テロリスト、あるいは現代の経済的搾取を主導するエリート層に至るまで、彼らは自らを「世界を正しく導く者」と信じ、その過程で生じる大量の犠牲を「必要なコスト」として切り捨ててきた。 なぜ、高度な教育を受けた「知能の高い人間」が、これほどまでに冷酷な、あるいは非人間的な決断を下せてしまうのか。
• 共感回路の麻痺:神経学者のデイヴィッド・オーウェンらは、長期間権力を保持したリーダーに見られる特異な症状を「ヒュブリス(傲慢)症候群」と呼んだ。脳科学的な実験によれば、権力を強く意識している状態では、他者の痛みに共鳴する「ミラーニューロン」の活動が著しく低下することが確認されている。
• 認知的欠損:権力は脳に対して「脳損傷」に近い影響を与える。他者の視点を取り入れる能力が物理的に失われ、自制心が低下し、衝動的な欲求が剥き出しになる。つまり、権力は人を「高知能なサイコパス」へと変容させるリスクを孕んでいるのである。
3. 昭和OSの限界:成功体験が「知性の進化」を止め、「防衛的退行」を招く構造
日本社会において特に顕著なのが、過去の成功モデルに固執する「昭和OS」の影響である。
• 石化した知性:高度経済成長期のような「右肩上がりの正解」があった時代には、支配と服従、効率の追求という「段階2〜3」の知性で十分に成功できた。しかし、その成功体験があまりに強烈であるため、時代が変わってもOSのアップデートを拒んでしまう。
• 防衛的退行:未知の価値観やAIのような新しいテクノロジーに直面した際、学びを止めたリーダーは強い「恐怖」を感じる。その恐怖から自分を守るために、彼らはより強固な権力行使や、身内だけの論理に閉じこもる。これが、知能は高いはずのリーダーたちが、組織を私物化し、若手の芽を摘む「老害化」という名の退行現象を引き起こす正体である。
結論:権力という「麻薬」に対する解毒剤の不在
権力や充足は、人間を「神」にするのではなく、「剥き出しのエゴ(段階2)」へと引きずり戻す。知能という強力なエンジンを持ちながら、ブレーキである「共感」と、ステアリングである「自律的な倫理」を失ったとき、人間は平然と「大量の犠牲」を強いるシステムを構築し始める。
この退行を防ぐ唯一の手段は、権力を持つ者ほど、自らの不完全さを自覚し、学び続けるという「知性のアップデート」を義務付けることである。しかし、現在の日本社会はその真逆の方向へと突き進んでいる。
第3章:日本社会の特異な危機 —「不学習」という静かなる自死
「失われた30年」の本質的な原因は、経済政策の失敗でも技術力の低下でもない。真の原因は、日本のリーダー層および実務層が「知性のアップデート(OSの更新)」を完全に停止させたことにある。この「不学習」こそが、日本社会を静かなる自死へと追い込んでいる。
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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