AI時代に求められる人財価値 「在り方」

2025.09.29

組織・人材

AI時代に求められる人財価値 「在り方」

齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

かつて、社会で求められる人間像は明確だった。 言われたことを、正確に、素早く、失敗なくこなす人。 知識を多く持ち、スキルに優れ、論理的に物事を処理できる人。 いわば“役に立つ人”こそが、価値ある存在とされてきた。 けれど、今、その前提が根底から覆されようとしている。 ――AIの登場である。 AIはもはや、単なる計算ツールではない。 膨大な知識を持ち、複雑な問題を論理的に解き、精度高く翻訳や文章生成を行う。 「知っていること」や「できること」では、人間はすでにAIに勝てない領域が出てきた。 この変化は、人類にある問いを突きつけている。 “では、人間にしかできないこととは何か?”

今回は同書「在り方 AI時代に求められる人財価値」からの抜粋を期間限定で掲載しました。

序章 なぜ、いま在り方なのか?

「この人と一緒に働きたいか?」

「この人の言葉なら、信じられるか?」

「この人の背中を、追いかけたいと思えるか?」

こうした問いは、履歴書にも評価シートにも書かれていない。

だが、現場で人が人を見極めるとき、実際に判断されているのはスキルや資格よりも“その人の在り方”だ。

かつては、知識や技術、指示の速さや正確さが“できる人”の基準だった。

でも今、技術や情報はあふれている。AIがそれを肩代わりできるようにもなった。

このような時代に求められるのは、誰よりも多くのスキルを持っている人ではない。

「この人が言うならやってみよう」と思わせる人である。

その違いは、何か?

――「在り方」だ。

■ “正しさ”より、“信頼”が人を動かす

これまでの社会は、「正しさ」や「効率性」で動いてきた。

でも今は、どれだけ正しいことを言っても、人は動かない。

むしろ、正論が人の心を遠ざけてしまう時代だ。

たとえば、あなたが上司だとして。

部下が何かで失敗したとき、

「こうすべきだったよね」と冷静に指摘するのは“正しい”かもしれない。

でも、その瞬間、部下の心の扉は静かに閉じるだろう。

なぜか?

それは、「正しい」かどうか以前に、“この人は自分の味方か?”という問いが無意識に働いているからだ。

つまり、信頼できるかどうか。共に歩む人だと感じられるかどうか。

そしてそれは、表面的な言葉ではなく、“その人の在り方”から伝わる。


スキルは再現できても、在り方は模倣できない

テクニックやノウハウは学べる。

どんな若手でも、教えられればある程度まで「できるようになる」。

だが、“その人らしい在り方”は真似できない。

誰かのモノマネでは、人の心を打てないのだ。

たとえば、ある若手社員が、いつも誰よりも早く出社し、挨拶し、誰かの手が足りなければ自然に動いている。

その姿に、周囲は静かに影響を受けていく。

「彼がやるなら、私もやってみよう」

「なんとなく、あの人の周りは空気が良い」

そこには、スキルや肩書ではない“人格の信頼”がある。

このように、「在り方」は組織の文化に、チームの空気に、確実に染み込んでいく。


若手こそ「在り方」に出会うタイミング

若手にとっても、在り方は未来を切り拓く最大の武器だ。

スペックや資格の競争は、上には上がいてキリがない。

でも、自分にしかない在り方、自分にしか歩めない物語は、誰にも奪えない。

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齋藤 秀樹

株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。

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