多くの企業が「努力不足」なのではなく、価値を設計するという視点が欠けているために伸び悩んでいるという構造を明らかになりました。 戦略はあり、現場も動いている。そして顧客とも接している。それでも価値が積み上がらないのはなぜか。その答えは極めてシンプルです。サービスを「設計対象」として扱ってこなかった、ただそれだけのことなのです。
「センス」という言葉で片付けてきた代償
一般的に、サービスは次のように捉えられがちです。
• サービスは「人」が提供するものだ
• その場その場の「臨機応変な判断」が重要だ
• マニュアル化しすぎると「冷たい対応」になる
これらはいずれも一理あります。しかし、この考え方が行き過ぎた結果、サービスはいつの間にか「センスのある人の仕事」「経験豊富な人の勘」「空気が読める人の裁量」に委ねられることになりました。これが、前回述べた「属人化が当たり前」という状態を招いています。
誤解してはならないのは、感覚に頼ること自体が悪いわけではないということです。真の問題は、その「感覚の中身」を誰も分解し、構造化しようとしてこなかったことにあります。
サービスにも「レシピ」や「脚本」がある
少し視点を変えて、他のクリエイティブな分野を見てみましょう。 例えば、映画や小説は「感情」を揺さぶる仕事ですが、その裏側には構成、伏線、展開といった緻密な「設計」が存在します。料理も同様です。味覚という感覚の世界でありながら、レシピ、工程、温度、時間といった要素が厳密に設計されています。
サービスも、これらと全く同じです。感情を扱うからこそ、その裏側には明確な構造があります。決して偶然起きているのではありません。「事前期待 → 体験 → 解釈 → 評価」という一連の流れの中で、価値は一貫して生み出されています。つまり、サービスは設計可能な「プロセス」であると言えるのです。
組織に横たわる「巨大な空白」の正体
多くの企業では、経営層が「顧客価値を高めよう」という抽象的な戦略を語り、現場は「目の前の対応」という具体的な業務に追われています。実は、この二つの間には、誰にも埋められていない「巨大な空白」が存在します。
それは、「価値が、どのように顧客体験として立ち上がるのか」を設計する視点です。戦略は抽象的すぎて現場に届かず、現場の工夫は具体的すぎて組織の資産にならない。この中間層が欠落したまま走り続けてきたからこそ、戦略はスローガンで終わり、現場は疲弊し続けるという悪循環が繰り返されてきました。
また、企業と顧客の間にも空白があります。「商品をどう売るか」は考えても、「顧客がどんな期待で選び、どんな基準で評価し、関係を続けるのか」という関係性の構造までは設計できていないのが実情です。
サービスサイエンス:見えない価値を扱うための「ロジック」
ここで、こうした「見えない価値」を扱うためのフレームワークが必要になります。それが、「サービスサイエンス」という考え方です。
新刊『事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~』
| 提供会社: | サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング) |
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2009.02.10
2015.01.26
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)
サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新
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