「PDCAはもう古い」は本当か?~現場を知らない「アルファベット遊び」に惑わされるな~

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2025.12.18

経営・マネジメント

「PDCAはもう古い」は本当か?~現場を知らない「アルファベット遊び」に惑わされるな~

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

ビジネスの基本とされてきた「PDCA」が、時代遅れだと言われ始めて久しい。「これからはOODAだ」「いやSTPDだ」と、新しいフレームワークが次々と提唱されている。しかし、長年企業の改革現場で汗をかいてきた者からすれば、これらは「言葉遊び」に過ぎないように映る。

マネジメントサイクルの「戦国時代」

「PDCA」を知らないビジネスパーソンはいないだろう。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)。このオーソドクスなサイクルを回すことこそが、マネジメントの基本中の基本とされてきた。

しかし近年、この王座を揺るがすかのように、新たなキーワードが飛び交っている。米空軍の意思決定プロセスに由来する『OODA(Observe-Orient-Decide-Act)』、ソニー流とも呼ばれる『STPD(See-Think-Plan-Do)』、あるいはPDCAの順序を入れ替えた『CAPD』や『DCAP』など、まさに枚挙にいとまがない。

「PDCAは計画偏重でスピードが遅い」 「変化の激しい現代では、まずは観察(Observe)から入るOODAの方が実践的だ」

こうした主張とともに、新しいサイクルが持て囃されている。確かに、計画にどれほどの時間を割くか、実行前の観察・分析にどれだけの重きを置くかという「重心」の違いはあるだろう。しかし、断言してもいい。これらは本質的には大した違いはない。

「いきなり計画」などありえない

そもそも、「PDCAはPlan(計画)から始まるから、現状を見ずに机上の空論で走ってしまう」という批判は、大きな誤解に基づいている。あるいは、実務を知らない素人の言いがかりと言ってもいいかもしれない。

かつての旧ソ連の経済計画ならいざ知らず、現代のビジネスにおいて、事前の情報収集や現状分析なしにいきなり「計画」を策定するプロジェクトなど存在するだろうか?

筆者がかつて、日本ユニシスやアビームコンサルティングといったファームで、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)を含む業務改革プロジェクトを主導していた頃の話をしよう。当時、我々もプロジェクトの進行を便宜上『PDCA』という枠組みで説明していた。しかし、その「Plan(計画)」のフェーズで実際に行っていたことは、単にスケジュールを引くような単純作業ではない。そこには以下の7つのステップが凝縮されていた。

【実務における「Plan」の内訳】

  1. 大目的・狙い・制約の確認と共有
  2. 現状(As-Is)の徹底的な把握
  3. あるべき姿(To-Be)の明示化
  4. ギャップの明確化
  5. 課題構造の分析と理解
  6. 課題解決策の策定と検証
  7. 実行計画(試行含む)の策定

ご覧の通り、「Plan」と一口に言っても、その中身の半分以上は「現状把握」と「分析」である。これはSTPDで言うところの「See(見る)」や「Think(考える)」であり、他のフレームワークが強調する観察要素と何ら変わらない。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/

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