2025.11.25
日本は本当に人手不足なのか? ―日本人が、対峙すべき現実―
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
本当に「人がいない」のだろうか。 それとも・・・ 「人はいるのに、立ち上がれないでいる」のだろうか。 この違和感から、話を始めたい。
1.「人がいないんですよ」で始まる会話
「人がいないんですよ。」
ある地方の製造業A社。
50代の社長は、コーヒーを一口飲んでから、そうつぶやいた。
- 求人広告を出しても応募は数人。
- やっと入った若手は半年もたたず退職。
- 残ったメンバーは残業続きで、表情はいつも疲れている。
「うちだけじゃないですよ。どこも人手不足でね……。」
社長はそう言うが、会議室の窓から外を見れば、
平日の昼間でも、カフェには若い人たちがスマホを眺めている。
駅のベンチには、仕事帰りかどうかも分からないスウェット姿の若者が座り込んでいる。
本当に「人がいない」のだろうか。
それとも・・・
「人はいるのに、立ち上がれないでいる」のだろうか。
この違和感から、話を始めたい。
2.数字が教えてくれる「別の現実」
まず、冷たい数字を見てみよう。
世界的な調査機関・ギャラップによると、
自分の仕事に「熱意を持って取り組んでいる」日本人社員は、わずか6%である。
世界平均は23%。日本は調査対象国の最下位グループだ。
このデータを前提にすれば100人中94人が、
- 「まあ、生活のためだし」
- 「本気を出しても報われないし」
そんな気持ちを胸に、職場へ向かっている。
一方で、「職場そのもの」から離れてしまった人も多い。
- 15〜34歳の若年無業者(いわゆるニートに近い層)は約59万人、若年人口の2.4%。
- 15〜64歳の「ひきこもり」は、約146万人と推計されている。
数字をざっくり足し合わせれば、
数十万〜百万単位で「社会との接点をほとんど失った人たち」がいる。
こんな光景が浮かぶ。
カーテンを閉めた六畳一間。
夜中までゲームと動画。
朝になっても、誰にも起こされない。
「そのうち何とかしないとな」と思いながら、今日も布団から出られない23歳。
彼・彼女たちを、
「やる気のない若者だ」と一刀両断するのは簡単だ。
だが、こうも言えるのではないか。
「人がいない」のではなく、
“人が立ち上がれる場”が、あまりにも少ない。
3.「人には投資しない」社会になっていないか
次に、「学び」と「投資」の観点で見てみる。
経産省などのデータでは、
日本企業の人材育成への投資(OJTを除く研修費用)はGDP比で約0.1%にすぎない。
アメリカやフランスは2%前後。文字通り、ケタが違う。
政府の報告書には、こんな一文さえある。
「日本では、企業は人に投資せず、個人も学ばない。」
この一文は、耳が痛いほど本質を突いている。
経営者よ、コミットせよ!
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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