事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~

2025.10.22

経営・マネジメント

事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~

松井 拓己
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

サービスには設計図がない――― これが私がサービスサイエンティストとして歩み始めた際に出会った問題意識です。

「リ・プロデュース」(Re-PRODUCE)には、「再現性」と「再設計」の2つの意味が込められています。属人的な経験やセンスに頼るのではなく、組織全体で安定的かつ高精度に価値を生み出し続けるための「再現性」を実現します。そのためにも、既存事業で蓄積した「価値を生み出す経験知」をもって、自分たちの手でサービスを「もう一度プロデュース=リ・プロデュース」します。これにより、これまで目に見えなかった価値の設計図を言語化・可視化することで、属人的には突破できなかった価値向上の限界を突破する足掛かりとするのです。これは事前期待へのアプローチ「深度ゼロ」に位置づけられます。

5段階の事前期待アプローチ深度

リ・プロデュース(深度0)から始まり、事前期待へのアプローチ深度を深めていくことで、ビジネスの成長を加速させます。

深度1. 価値化: リ・プロデュースでは、現在生み出している価値を象徴する事前期待を定義しました。深度1では逆に、現状では満たされていない「事前期待の穴」を発掘します。たとえば、これまで(あるいは他社)では応えられていなかった期待(顧客が諦めている事前期待)に応えることができれば、「こんなサービスあると良いなと思っていたんです!」と、顧客にとっての価値が格段に高まるでしょう。サービスの価値化は、「事前期待の穴がどこにあるのかを見つけること」がポイントなのです。

深度2. 整える: 膨らみすぎた事前期待を「冷ます」マネジメントを行う。これは、業務効率化だけでなく、顧客と協力して価値共創を行うためにも重要です。

深度3. 進化: 「今の」事前期待だけでなく、「未来の」へと時間軸を拡張して、顧客の事前期待を「進化」させる目標地点をモデル化します。これにより、目標地点を設定せずに行いがちなカスタマーサクセスや価値共創の成功確率を高めます。

深度4.探索: 顧客も認識していない真の事前期待を、顧客と一緒になって探し出す。この探索プロセスそのものが、顧客にとっての新たな価値となります。

「もと立ちて、道生ず」という言葉のごとく、「事前期待の的」を見定めて価値の設計図とすることで、価値創造の土台を固めることから始めます。この土台こそが「もと」であり、深度0の「リ・プロデュース=再現性と再設計」です。この設計図が「もと」になることで、事業成長の「道」が見えてきます。その「道」とは、事前期待の穴を見つけて「価値化」する深度1、膨らみすぎた期待を適切に調整する「マネジメント」(深度2)、さらに価値を「進化」する深度3、真の事前期待を「探索」する深度4へと、アプローチを深める道のりです。

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松井 拓己

サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。              【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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