高齢期の喪失は、解放の喜びに変えられる。

2022.12.14

ライフ・ソーシャル

高齢期の喪失は、解放の喜びに変えられる。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

喪失をポジティブに捉える高齢者が増えている。

若い世代からはネガティブに感じられる(あるいは同情を持って見られる)ような「喪失」を、まずは、「年を取れば当然に訪れること」として受け入れ、次にそれを「解放や自由の獲得」として異なるフレームで捉え直し、さらなる解放と自由を求めて、モノ・人間関係・仕事・役割などを積極的になくそうとする――。こうした人たちの話を聞いていると、必要なものと好きなことしか自分の周りにないような“身軽な状態”をつくって、長い高齢期を楽しもうという意思を感じることもあります。

もちろん、高齢期は喪失するばかりではありません。語彙(ごい)や鑑賞力、表現力は、創作している俳句や短歌、絵画、書道、写真などを見ると衰えるどころか、能力は発達し続けることを実感します。高齢者の皆さんと講座やセミナーでお話をする機会がありますが、参加者の学ぶ意欲は多くの若い人たちの比ではありません。また、経験に基づいた知恵や物事を洞察する力はもともと高齢者の強みで、若輩がかなう部分ではありません。

このように見てくると、私たちはどうも、「若い頃にはあったのに、年を取ると失ってしまうものは何か?」ということばかり考えてきたように思います。そうすると「喪失」に焦点が当たってしまうのは当然で、高齢者を「いろんなものを失っていくだけの弱者」と見なしてしまうでしょう。高齢者自身がこの問いに答えていると、自分を弱者としか思えず、どんどん自信がなくなってしまいます。

先述した、自由や身軽さを求める高齢者たちはそうではなく、「若い頃には縛られていたのに、年を取ると消えてしまうものは何か?」「若い頃より、できるようになったことは?」「年を取らないと分からないことは何か?」といったことを考えているのではないかと思います。そうすると、解放や自由、発達する能力や自分の強みに焦点が当たってきます。高齢者だけでなく、若い世代も高齢期をポジティブに捉えられるようになるのではないでしょうか。

川口雅裕 公式サイト

高齢者講習


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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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