スーパー高校生の才能を活かせなかったキャリア教育の悲劇

2022.09.20

組織・人材

スーパー高校生の才能を活かせなかったキャリア教育の悲劇

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

千葉大学が1998年に全国初で導入した「飛び入学」。高2で千葉大に進学できた方が、大学院修士課程まで進んだものの、現在トラックの運転手をしているということが何度か報道されました。「キャリア教育」が本格的に広がる前の2000年代の出来事です。真のキャリア教育が機能できていたら、物理の天才を持ったスーパー高校生の進路を活かせた可能性があります。

私は15年の大学院生のキャリア支援を通じて、何百社もの博士受け入れ企業を開拓してきました。国立上位校博士後期課程を修了し、民間企業にキャリアを得る学生を今も多数指導しています。15年前と違い今は、博士というだけで門前払いするような大手製造業はまずありません。

むしろ上場や大手メーカーの方が博士採用の可能性は高いので、学生の企業選択も修士や学部とは視点を変えることを指導しています。一方で民間就職以上に厳しく、狭き門であるアカデミアの進路についても、単に博士号があるから程度で進めるキャリアではないことを教えています。むしろ支援してきた学生でアカデミックポジションに進んだ博士学生は、民間企業でも堂々と通用するようなコンピテンシーの高い者が中心と感じます。

国立上位校の理系であれば学部生の9割以上が修士に進学します。バリバリの基礎研究をしていても民間企業に就職する院生は、修士はもちろん博士でも普通にいます。研究テーマだけで採否を決める企業はまずありません。高いインテリジェンスと、研究で培った課題発見・設定能力をちゃんとアピールできれば実際に採用されています。企業のメガネに叶わず採用されないのは、文系学部生であっても全く同じ状況です。

・正確なキャリアの情報を得るには
人文学系博士のニーズがないことは事実です。しかしそれは進学前から十二分にわかることであり、それでもあえて博士進学をした以上、「こんなはずではなかった」と後悔することがないような覚悟を決めさせることがキャリア指導の責任でしょう。

大学院生キャリアについては、必ず専門家の意見を聞いて下さい。何十年も前の話や、想像だけのアドバイスは著しく正確さを欠き、自分の人生を決める上で避けなければなりません。今、国立上位校には必ず博士人材キャリアの専門部署があります。

上位校の学部生や修士ですら就職に苦しむ学生がいるように、リスクをゼロにすることはできません。しかし意欲があり、能力を持つ人材であれば、上手にリスクコントロールをしながらキャリアを築く道は、むしろ今豊富に用意されているといえるでしょう。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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