クリスマスのお話:橋の上で

2021.12.12

ライフ・ソーシャル

クリスマスのお話:橋の上で

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/だけど、物語は、後半がおもしろいんだ。最後の最後、終わり一ページでどんでん返しかもしれない。だから、最後のページまで、途中で閉じちゃダメだ。きみはひとりじゃない。きみは祝福されている。きみを待っているひとたちがいるんだ。/

だけど、物語は、後半がおもしろいんだ。

最後の最後、終わり一ページでどんでん返しかもしれない。

だから、最後のページまで、途中で閉じちゃダメだ。

先なんか、どうでもいい? おい、待て、待てって! 立ち上がるんじゃない!

ほら、検索できた! そこから降りてきて、このリスト、見ろよ。

うん、そう、これ、きみの子どもたち、孫たち、曽孫たち。

ずーっと祝福されているだろ。ぜんぶ予定されているんだ。

いまここできみがいなくなったら、このリストも消えてしまうぞ。

それだけじゃないぞ、ほら、これ、見てごらん。

きみの教え子たち、その子どもたち。孫たち。これも、消えてしまうぞ。

どういうことかって? わたしにも、よくわからないが、

きみはきっと学校の先生、それも教え子の数が多いから、校長になるんじゃないかな。

いまはつらいだろうが、もう何年もしないで、きみは都会の大学に行くんだろ。

あんな連中には、もう二度と会わない。

心の傷は消えない、って? でも、それがきっとずっときみを支えるんじゃないか?

それがあるから、きみは、いまのきみの先生や校長のようにはぜったいにならない。

それで、きみはきっと多くの子どもたちを救う。

きみは、きみのように悲しみ苦しむ子どもを出さない。

そのためにも、きみはお入り用なんだ。きみはもう祝福されているんだよ。

わかるかい? こんな祝福を伝えることしかできないけれど、

先生や校長、友だちがどうあれ、きみは、きちんと見守られている。

だから、わたしが来たんだ。だいじょうぶだから、もうすこしだから。

おっと、なんか鳴っているな。次の仕事の催促だ。

こんな年寄りだが、とにかくわたしはきみの味方だよ。

来年、また会おうよ。もっと元気になってね。わたしも長生きするからさ。

ほら、カゼひくぞ。早く帰って、暖かいミルクでも飲んで、ぐっすり寝るんだよ。

そして、あした、目が覚めたら、なにがあっても堂々と胸を張ってな。

きみはひとりじゃない。きみは祝福されている。きみを待っているひとたちがいるんだ。

じゃ、次の子のところへ行くよ。いいね?

あ! え、そうか。まぁ、そういうこともあるかもな。

どうしたって? いや、次は、女の子でね、

きみのと同じ子どもたちがリストに続いているんだよ。どういう意味か、わかるだろ?

それだけじゃない、なんだかほかにもかなりの人数がリストにリンクされている。

医者か弁護士にでも、なるのかな。それとも、きみと同じ、学校の先生かな。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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