サンタ、火星へ

2020.12.23

ライフ・ソーシャル

サンタ、火星へ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/最近は火星でもクリスマスをやるらしい。しかし、さていったいなんのプレゼントを持っていったらいいのやら。/

「おい、どうすんだよ? 大将、もう乗り込んじゃってるぞ」
「そりゃ、御大が御機嫌なのもわかるけどさ」
「ここんところ、手紙もめっきり減ってたからなぁ」
「少子高齢化のせいか?」
「それだけじゃないだろ。ちかごろの子どもは夢も見ない」
「まあ、現実が現実だからな。自分の先が見えちゃってるし」
「だけど、なんで火星から……」
「よく知らないけど、あっちで地球ブームらしいよ」
「こっちでも、火星は最先端だもんなぁ」
「何年前だっけ、あのタコみたいな連中が突然にやって来たのは?」
「おいおい、タコって、それ差別だぞ。そんなこと言うと、連中にサルみたいって言われるぞ」
「いや、だけどさ、ほんとに絵に画いたみたいなすがたかたちじゃないか」
「まあ、実際、タコかなにかから進化した異人類らしいからね」
「とにかく友好的でよかったよ」
「それにしても、サンタに手紙を書くなんて、ずいぶんレトロだな」
「そういうのがいいんじゃないのか。ハイテクなのは、あっちの方が進んでるし」
「ああ、さっき着いた迎えのロケットだって、とんでもない高性能だもんなぁ」
「もう経済や産業じゃ、火星にかなわないよ」
「いよいよ地球はもう夢も希望も無いな」

「で、どうすんだよ? いそがないと」
「いや、だって、どうしたらいいんだよ、火星人だぞ」
「たしかに…… 連中の生活だってよく知らないのに、火星人の子どもの好みなんかわかるわけがないな」
「やっぱりゲームとかアニメとかかなぁ」
「どうだろね。でも、宇宙で戦っちゃうのとか、まずいだろう?」
「そりゃダメだ。せっかく手紙をくれたのに」
「そうだ、手紙! 手紙になんて書いてあったんだ?」
「さあ? だいいち、あれ、火星語でさ」
「え、そうなの? じゃぁ、なんで内容がわかったの?」
「だって、子どもの字だし、この時期にサンタに手紙ったら、プレゼントのお願いに決まってる」
「だけど、それなら、プレゼントに何々がほしいって、書いてあったはずだぜ」
「まあ、そうなんだろうけれど……」
「機械翻訳とか、なんとかならないの?」
「そんなの、とっくにやったよ! だけど、誤字脱字だらけらしくて、ぜんぜん意味がわからない……」
「いや、こまったな……」
「うーん、こまった……」

「あ!」
「なに?」
「おい、迎えのロケット、来てるんだろ。そのパイロット、火星人なんだろ」
「あ、そうだ。たしかにタコみたいなやつが乗ってた」
「おい、タコって言っちゃダメだって」
「ごめん、ごめん」
「なんにしても、あの人、すぐ呼んでこよう」
「うん、でも、言葉が通じるかなぁ……」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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