キリスト教からイスラム教へ

画像: 映画『ザ・メッセージ』1976から

2021.05.25

開発秘話

キリスト教からイスラム教へ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/私が東大にいたころ、イスラム学科ができたばかりで、学生は一人だけ。教授と一対一では気まずい、というので、彼につきあって私と友人の三人で受講したが、当時はまだ、イスラムなど、共産圏よりも遠い話。それが、いまでは生の情報も増え、あのころ習ったのとはずいぶん違うほんとうの姿が見えるようになってきた。/

J なんか上の方で、ドタバタやってるんですね。

キリスト教だと、教会は、救済を独占しようと、天使や聖人に対する世俗的な信仰、それどころか聖母マリアに対する信仰でさえ嫌うようになります。これに対して、イスラム教では、聖職者を認めず、第三に信じるべき啓典を通じて、神がすべての人に直接に語りかける。啓典によって、ムスリムは、どこにいても神を直接に知ることができ、イスラム教が広く世界に広まる契機となりました。

。啓典は、天使同様、やたらたくさんあるのですが、なかでも、『モーゼ五書』、『ダビデ詩編』、『イエス四福音書』、『クルアーン』が重要視され、これらの中では、もちろん『クルアーン』が完全で最高のものと信じられています。『クルアーン』は、詠唱すべきものという名のとおり、美しい完全な響きをともなうアラビア語のまま読んで覚えるべきものであり、アラブ人以外のムスリムにもアラビア語を国際共通語として広めることにもなりました。

J 『クルアーン』は、言わば持ち歩ける個人教会だったんですね。

第四は、預言者。これも二十人以上もいますが、アダム、ノア、アブラハム、モーゼ、イエス、ムハンマドの六人が特別。ただし、前の五人が正確に神の意向を伝えるのに失敗したからムハンマドが使わされた、とか、イエスもただの人間で、それも磔刑になったのは替え玉だ、とか余計なことを言うから、ユダヤ教やキリスト教と揉める原因に。

もっとも、ムハンマドにしても、最も模範的な人間とはいえ、それでもしょせん人間の一人にすぎず、神の言葉の啓典にも及びません。それゆえ、神でもない人間ごときを崇拝したりしないよう、神とはまったく別の意味で、ムハンマドの像や絵も禁じられています。

J ムハンマドが偉いから絵にしちゃダメなんじゃなくて、ムハンマドは神さまのようには偉くないから絵にしちゃダメなのか。

第五は、来世。人間は死ぬと、とりあえず冥界、バルザフで最後の審判を待ちます。そして、蘇って審判を受けた後、信仰を率いてきた人々と善人は、かつてアダムとイブが追放されたエデンの園に戻って暮らすことになります。信仰を率いてきた人々は、神の玉座の近くで、少年たちに給仕されながら、若い美女たちと酒や果物、肉を飲み放題、食べ放題。その他の善人も、同年代の女性をあてがわれるのだとか。一方、悪人は、エデンの園への橋を渡れず、奈落、ジャハンナムに落ちる。そこで食べるアッダリという苦い実は、腹の中で沸騰して肉体を破り、全身も火で焼かれ続ける。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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