キリスト教からイスラム教へ

画像: 映画『ザ・メッセージ』1976から

2021.05.25

開発秘話

キリスト教からイスラム教へ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/私が東大にいたころ、イスラム学科ができたばかりで、学生は一人だけ。教授と一対一では気まずい、というので、彼につきあって私と友人の三人で受講したが、当時はまだ、イスラムなど、共産圏よりも遠い話。それが、いまでは生の情報も増え、あのころ習ったのとはずいぶん違うほんとうの姿が見えるようになってきた。/

J イスラム教の国々って、たしかにその後、近代の資本主義には乗り遅れるけれど、少数だけが金持で、経済が回らず、みんなが困窮する不況とは無縁みたいですよね。

第四は、《断食》、サウム。イスラム暦の「暑月」、ラマダーン30日の間、日中に飲食を控えるというものです。これは、イスラム創生期の苦難と、世界の貧困者の窮乏を身をもって思う、ということで、飲食だけでなく、あれこれ禁止だらけで、けっこう大変なのですが、日没後は、毎日、みんな、やりたい放題。まして、ラマダーン明けなんか、バカ騒ぎ。まあ、それで、共同体として信仰を確かめ、結束を高める効果があるようです。

J イスラムって、月に基づく太陰暦で、一年が三五四日だから、暑月と言っても、毎年、十一日ずつ、ズレてっちゃうんですよね。

そして、最後は、《大巡礼》、ハッジ。一生に一度は、身を清め、イスラム暦の「巡礼月」八日からの六日間のメッカ市の行事に参加する。これは、まだメディナ市のムスリムがメッカ市と対立していた629年に、ムハンマドが信徒千人とともに、あえて無武装の白衣のみでカアバ神殿に参拝し、神の加護を示して、メッカ市の人々はもちろん、周辺部族まで圧倒した、という故事にちなむもので、神殿をぐるぐる回るだけでなく、その前後に、周辺のあちこちに行って、あれこれをやらないといけない。

J これも大変そうだけど、お伊勢参りみたいに、ちょっと楽しそうだな。


10.02.04. イスラム教の世界観

J 世界については、どんなふうに考えているんですか?

イスラム教では、六信、アキダーということが言われます。まず、神。それは唯一絶対の存在だから、アッラー、ザ・ゴッド、というだけで、名前もありません。そして、ユダヤ教だろうと、キリスト教だろうと同じもののはず、というのがイスラム教の考え方です。また、神は、人間ごときにわかりうるはずもないものだから、神を論じること、神学、ザンヌは徹底して退けられ、神の像や絵も禁じられました。

神は、絶対の正義。ただ、これも、『クルアーン』にある初期の預言だと、やたらすざまじい最後の審判で脅す恐ろしい神なのですが、共同体が落ち着いてきた後期になると、人間の弱さを理解して、それを救おうとしてくれる寛大で慈悲深い神になってきます。

J やっぱり、おっかない神さまより、やさしい神さまのほうがありがたいですよね。

神に次ぐ第二が、神が光から創った聖霊。キリスト教なんか以上に人格的だから、天使と言ったほうがいいかも。守護するミカエル、伝達するガブリエル、これらにキリスト教だと治癒のラファエル、ユダヤ教だとさらに天候のウリエルが加わるのですが、ユダヤ教やキリスト教以上に最後の審判を強調するイスラム教だと、死神のアズライル、地獄のイスラフィルを入れて四大天使に数えています。また、ユダヤ教やキリスト教と同様、堕天使、悪魔たちもいて、これらが人間を誑かそうとするので、人間は天使に守ってもらう必要があるのだとか。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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