​闇の奥での暮らし方:新生活を始める若い人たちへ

2021.04.17

ライフ・ソーシャル

​闇の奥での暮らし方:新生活を始める若い人たちへ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/旧弊を刷新しようと乗り込んでいったはずのやつらが、そのわけのわからない正体不明の化け物に魂を奪われ、いつの間にか「土人」たちの王となって、むしろ旧弊の権化として支配し、化石になったボロボロの象牙を掘り出して喜んでいる。余所者は、現地の「土人」以上の「土人」にならないとやっていけないのか。/

 口先はともかく、ここに骨を埋める、などと思うな。どこにあろうと、しょせんきみは永遠に余所者だ。改革などできると思うな。彼らは変わらないし、変れない。よかれと思って、なにかしても、よけいなことと逆恨みされるだけ。まして、自分でも現地で「土人」たちといっしょに手を汚したら最後。二度と抜け出せなくなる。その魔境こそが生きているのであり、その魔境は抗って勝てるものではない。抗おうとすれば、よけい搦め手に取り込まれてしまう。

 『闇の奥』の中央出張所に、若い上級社員がいる。レンガ作りの担当だそうだが、素材が無いとか言って、そんな仕事はまったくしていない。ふらふら、ふわふわ。マーロウは、こいつ、張り子で、中はからっぽ、底に砂ぼこりがあるかないか、とバカにしている。だが、ここまで信念も存在感も無い彼は、なまじ年季のいったクルツ氏のようにも、支配人のようにも、マーロウのようにもならず、きっとなにごともなかったかのように自分のいるべきところへ流れ帰って行き、そこであるべき自分の人生をうまく見つけるだろう。私は、それはそれで、当座の魔境の暮らし方だとも思う。


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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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