サンタ、少子化問題に取り組む

画像: photo AC: acwork さん

2018.12.21

ライフ・ソーシャル

サンタ、少子化問題に取り組む

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/世界中で同じことわざがある。英語だと、Two can live as cheaply as one、日本だと、一人口は食えぬが二人口は食える。いっしょに暮らせば、家賃半減、収入倍増。/

ぴーんぽーん。
「はーい。あ、サンタさん? いま開けますっ」
がちゃ。
「おい、きみ! 頭、だいじょうぶか?」
「?」
「そんなすぐに開けていいのか? 世知辛い年末だぞ。もしサンタに扮した押し込み強盗だったら、どうするんだ!」
「はあ……」
「まあ、いい。うーっ寒い。とにかく上がるぞ」
「ええ、どうぞ」

「うーん、まったく殺風景な部屋だな」
「はあ、すみません」
「とはいえ、そこそこ片付いているのは悪くないな」
「あんまりモノもないもんで」
「趣味とか無いのか? 趣味とか!」
「散歩かな。あとはテレビ……」
「ずいぶんカネがかからん趣味だな」
「はあ、あんまりカネもないもんで……」
「ん、それはなんだ?」
「あ、こたつです。よかったらどうぞ」
「うむ。で、きみの飲んでるそれは?」
「チューハイです」
「アルコールだな。きみは、それで客をもてなさんのか?」
「あ、はい。でも、えーと……」
「なんだ、もう無いのか?」
「いや、そうじゃなくて、この時間、まだお仕事中じゃないかと……」
「かたいことを言うな」
「でも、ソリでしょ」
「うむ、下のアワーズ24に停めてある。長居はできん」
「まだ運転するんでしょ」
「だいじょうぶだ。いまどき自動運転だから」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「ちっ!」
「はい、ミルク。レンジで暖めました。クッキーが無いんで、柿のタネですけど」
ぼりぼり。「うーん、これ、スパイシーで悪くない」
「気に入っていただけてうれしいです」

「で、なんだ、きみ、今年はなにがほしい?」
「え、この年で、まだなにかもらえるんですか?」
「いや、だって、きみ、まだわたしを信じてるんだろ? わたしが見えるんだろ?」
「……ええ、まあ……」
「だいいち、きみ、あれだ、きみはまだ『良い子リスト』に名前がある」
「へぇ、そうなんですか?」
「きみ、もう表彰ものだぞ。そんな馬鹿は世界でも多くないぞ」
「てへへ」
「いや、ほめてるんじゃない」
「はあ……」
「で、なんかほしいものは?」
「うーん、テレビもあるし、冷蔵庫もあるし、レンジも、エアコンもあるから……」
「クルマとかどうだ?」
「あー、でも、維持費が。行くあてもないし」
「じゃあ、温泉宿泊券」
「休み、取れないんですよ」
「あのさ、嫁さん、どうだ?」
「え! なに言ってるんですか。ははは」
「いや、まじで」
「ぼくなんか、まだペイペイですよ。ムリでしょ。そうでなくても、いままでだれにも相手にされたこともないんですから」
「でも、好きな人とかは、いるんだろ。ほら、人事の中村さん」
「な、なんで……。いや、たしかに同じフロアだし、会社の前のコンビニでよく会うし。でも、あいさつくらいしかしたことないから……」
「あの人、どう?」
「どう、って、どうもこうも……」
「ほらほら、な、好きなんだろ? 正直に言っちゃえよ」
「あのー、サンタさん、ミルクで悪酔いしてませんか?」
「どうなんだ? 好きなんだろ」
「そりゃ、好きですよ。かわいいし、やさしいし、ちょっと変わってるし」
「ほらぁ、やっぱり大好きなんだ」
「いや、だけど、話したこともないんですよ」
「いいな、若いってのは、うん」
「からかってるんですか? そんなことしに、来たんですか?」

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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