ザッポス新社屋オープニング・セレモニーと家族的価値観(2013年9月)

画像: 石塚しのぶ撮影

2020.12.31

経営・マネジメント

ザッポス新社屋オープニング・セレモニーと家族的価値観(2013年9月)

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

元ザッポス社CEOトニー・シェイの追悼ブログ。12年間にわたる交流を通して、トニーの人となりを知るきっかけとなった出来事を回想し綴る。第八回は2013年にザッポス本社がラスベガス・ダウンタウンの旧市庁舎に移転した際の、オープニング・セレモニーで感じた家族的価値観と「Togetherness」について。トニー・シェイはそういった演出の名人だった。

オープニング・セレモニーを象徴するキーワードをひとつあげると、それは「Togetherness(一体感)」だった。1,577人が一緒にテープをカットし、新社屋のオープニング、言い換えれば、ザッポスにとっての新しい時代の始まりをお祝いしたこと。そして、その日に、新社屋と共にお披露目された、ロビーの入り口横の『part of the Zappos Family!(ザッポス・ファミリーの一員!)』というサイン。

それは今でもザッポスのロビー入り口を飾っている。写真ではよくわからないかもしれないが、レゴ・ブロックでできている。社員各々が一個ずつ、レゴ・ブロックをはめ込んでつくったというのだ。オープニング・セレモニーの日には、ぜひ、お好きなところにどうぞ、と招待客も促された。私も言われるままにレゴ・ブロックをそのどこかにはめ込んだ。だから、今でも『ザッポス・ファミリーの一員!』というサインの中には、私のあの時の気持ちが埋め込んである。

トニー/ザッポスはそういう仕掛けが心憎いほどにうまかった。旧社屋では訪問の際にステッカータイプの名札を着用する決まりになっていたが、用事を終えて社屋を後にする前に決まって行う「ある儀式」があった。ロビーには使用済みの名札が幾重にも重ねて貼り付けられてできたボールがあって、「ルシール」という名前までついていたが、「ルシール」に自分の名札を貼り付けて帰るようにと促されるのだ。訪問客はそうして、自分の印を遺してザッポスを後にした。それは、「ザッポス・ファミリーの一員」であるという証のようなものだった。

「ザッポス・ファミリー」は、トニーにとっては社員だけではなく、ザッポスのサイトで買い物をする顧客や、ラスベガスの住人たちや、取引先の人たちや、ザッポスが触れるすべての人を意味した。2013年9月9日、ザッポスは1,577人の祝福を受けて、新たな時代の第一歩を踏み出そうとしていたのだ。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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