ダンボとピンクの象

画像: 『ダンボ』ピンクの象のパレード

2020.06.24

ライフ・ソーシャル

ダンボとピンクの象

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/気をつけろ、気をつけろ、そこら中にピンクの象がいるぞ。どうしたらいい、どうしたらいい、満艦飾の硬皮連中はうんざりだ。追っ払え、追っ払え、でも、君らの手助けが必要だと思っているんだ。/

 1941年と言えば、すでに第二次世界大戦の泥沼化は必至だった。アメリカ政府は、ディズニーに国策への協力を要請した。しかし、それは、プロパガンダ映画のためか。それなら、当時、落ち目のディズニーなどより、ディズニーを辞めた連中が作った「白蟻ハウス」の方が量産能力があったはずだ。

  そのうえ、ウォルト・ディズニー本人は、極右共和党員、つまり、アメリカン・ファシストだった。ファシストやナチズム、国粋主義というのは、べつにイタリアやドイツ、日本だけのものではなく、当時はイギリスやフランス、オーストリア、アメリカなど、連合国側の中でも、反共主義・拡大主義として、同じくらいの力を誇っていた。ただそれが反ドイツの国民的団結ということで、見えなくなっていただけだ。

 しかし、先述のように、『ダンボ』はウォルト・ディズニーによるものではなく、別働隊による制作の中にあって、とくにピンク・パレードのシーンだけは、プルートのハエ取り紙シーンで有名な、主力隊筆頭の天才的アニメイター・ノーマン・ファーガソンの監督によるものだ。

 当時の大統領は、フランクリン・ルーズベルト。ロバの民主党。一方、象と言えば共和党を表す。それは、サンタ・クロースのキャラクターを作った、かの新聞マンガ家トーマス・ナストが、1874年の政治状況をからかったことに由来する。ナストは、シェイクスピアだったか、フランシス・ベーコンだったか、(ほんとうはイソップ=アイソーポス) と言って、こんな寓話を紹介する。ライオンの皮を被ったロバが、吠えまくって、恐れをなす象などの動物を引きつけている、と。

 この話には元があって、この直前の9月9日に、ニューヨーク・ヘラルド紙が、多数の目撃者による情報として、セントラルパーク動物園から猛獣たちが逃げ出し、数百人が惨殺された、との、まったくの与太記事を飛ばしていた。それは、当然、マルクスの共産党宣言の「妖怪」を連想させる。つまり、ネストのマンガは、共和党の最悪の軍人大統領グラントの独裁を批判しながら、その背景の外圧(当時のプロシアや共産主義)のいかがわしさを指摘するものとなっている。

 これを踏まえて、ファーガソンらがエレファンツ・オン・パレードを作ったとなると、それは、極右共和党員である社長のウォルト・ディズニーに対する当てこすりにほかならない。

 しかし、さらにその背景、となると、ネズミと象というのがキーワードになる。ネズミというのも、けっしてミッキーマウスではない。そして、ネズミと象、酔っぱらい、それも、ブルーとピンクとなれば、それは、1913年のジャック・ロンドンの自伝『ジョン・バリーコーン』の一節にほかならない。ファーガソンら、ディズニー・スタッフは、『バンビ』以前に、ロンドンの『野生の叫び声』のアニメイション化を検討していて、その自伝に行き当たったのかもしれない。しかし、それだけだろうか。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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