「リスク管理としての企業文化マネジメント」はもはや米ビジネス界の常識

画像: 石塚しのぶ撮影

2020.02.07

経営・マネジメント

「リスク管理としての企業文化マネジメント」はもはや米ビジネス界の常識

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

2017年にアメリカのビジネス界を騒がせたライドシェア・サービス大手ウーバーのスキャンダルを皮切りに、近年、企業文化が企業価値に与える影響がクローズアップされてきている。「良い企業文化」はもはや「Nice-to-have(あったらいいな)」的なものではなくなり、企業文化の劣化と共に起こり得る不祥事や経営不振などのリスクを回避することを目的とした「企業文化マネジメント」の必要性が叫ばれ始めている。

さらに、昨年2019年には、アメリカを代表する大企業のCEOで構成される協会ビジネス・ラウンドテーブルが、『企業の存在目的は株主利益の創出のみならず、顧客、従業員、取引先、地域社会、自然環境といったすべてのステークホルダーに対する利益創出である』とする声明を発表しました。ビジネス・ラウンドテーブルでは、1978年以来、『企業にとって唯一の存在目的は株主利益の創出である』という保守的な立場をとってきたため、昨年の声明の刷新はビジネス界全般に大きな波紋をもたらしています。この「ステークホルダー・アプローチ」も、「コンシャス・キャピタリズム」や「スモール・ジャイアンツ」、そして「コア・バリュー経営」という一連の流れに共通するものだと思います。

コア・バリュー経営は「意図する企業文化」構築のシステマティックなアプローチ

とにもかくにも、二言目には「企業文化」がビジネスの論議にのぼるようになったということですが、何もかもを「企業文化」の副産物として片づけることによって、問題点の定義や分析を不明確でいいかげんなものにしてしまうのではないかと危惧する声もあります。私としては、企業文化が「良い」「悪い」という単純な議論に終始するのではなく、むしろ、企業文化により真剣に取り組むこと、つまり、「どんな企業文化を創りたいのか」を明確に定義し、経営戦略の一環として「戦略的企業文化の構築」に取り組むことが必要だと考えるのです。そのためには、「コア・バリュー(社内で共有すべき中核となる価値観)」を基盤とし、その日々の実践を通して意図する企業文化を醸成していくシステマティックなアプローチが必要不可欠だと強く思います。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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