テレワークの時代に「会社」としての一体感や仲間意識を維持するには?

画像: ダイナ・サーチ撮影

2020.05.29

経営・マネジメント

テレワークの時代に「会社」としての一体感や仲間意識を維持するには?

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

コロナ感染拡大抑止のための「ロックダウン(外出禁止令)」が引き金となり、アメリカ中のオフィス・ワーカーが「在宅勤務」を強いられることとなった。先日、フェイスブックは今後、オフィスの「リモート化」を方針として進めていくことを発表し、2030年までに社員の半数が「リモート」の体制で働くことになると予測している。豪華なアメニティや見た目のカッコよさを売りに、社員が自慢できる「キャンパス」は長らく企業文化のシンボルとして、そして「セレンディピティ」とイノベーションを触発する場として、その会社で働く人の心をひとつにする役割を果たしてきた。テレワークの時代の「従業員エンゲージメント」は果たしてどこに行くのか?

コロナショックがきっかけとなって、アメリカ中のオフィス・ワーカーというオフィス・ワーカーが一気に「在宅勤務」を強いられることになった。六月がつい目前に迫った今日では、各地ロックダウン(外出禁止令)の緩和・解除が進んでいるものの、一時はアメリカの人口の95%が「ロックダウン」となり、「テレワーク(アメリカでは「リモート・ワーク」)が突如としてメインストリームな働き方となった。

そこで浮き彫りになってきたのが、「オフィス」という場所/物理的な空間が、従業員のエクスペリエンスやエンゲージメントにどんなに大きく貢献していたかという事実だ。考えてみれば、近年、特にシリコンバレーのテック企業や飛ぶ鳥を落とす勢いのスタートアップ企業は、優れた人材をめぐる競争の中で、他社に勝る「カッコいいオフィス」や「豪華なアメニティ」、そして「エンターテイメント」を提供することに並々ならぬ力を注いできた。

しかし、コロナ感染対策として「在宅勤務」が義務づけられ、従業員が集う「オフィス」という場が失われた今、いかに「従業員エクスペリエンス」や「エンゲージメント」を高めるのか、会社として、チームとしての一体感や、結束や、仲間意識を維持していくのか、ということが重要な課題となり、企業のリーダーはみなこの課題に頭を悩ませている。

たとえばつい先日、グーグルは、2020年の年末までは一部のチームを除き在宅勤務を続行する方針をシリコンバレーの本社で働く全社員に通達した。グーグルのキャンパスといえば、健康で美味しい食事を一日三食無料で食べられるカフェテリア、フィットネス・センター、無料マッサージ、無料理髪店、無料ランドリー・サービスなど贅沢を極めたアメニティの数々で有名である。それが、グーグル社員にとって自慢でもあるだろう。今までは「キャンパス」に集い、生活を共にすることで、一体感や仲間意識を保っていた人たちが、各自の自宅から働くようになった今、「グーグラー(グーグルの社員はこう呼ばれる)」としてのアイデンティティをどうやって築いていくのか。これはグーグルだけでなく、世の中の会社の多くが今後直面する深刻な課題であるといえる。(フェイスブックは2030年までに従業員の約半数が「リモート・ワーカー」になると予測。今後、「リモート・ワーク」を前提とした雇用を強化していく意向を発表している。)

スカイプズームなどのウェブ・ミーティング・プラットフォームや、メッセージング・プラットフォームは数多(あまた)の選択肢が存在し、無料で、または安価に使うこともできる。多くの人、会社は既にこういったテクノロジーを利用し、打ち合わせをしたり、全社会議をしたり、プロジェクト管理をしたりもしているだろう。しかし、テクノロジーを導入すれば、会社として、チームとしての一体感や結束や仲間意識が育まれるかというとそうではない。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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