健康寿命は、“どこに住むか” で決まってしまう。

画像: Cory

2019.09.02

ライフ・ソーシャル

健康寿命は、“どこに住むか” で決まってしまう。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

日本老年学的評価研究機構が、約20万人の高齢者を調査した結果から考えた。

『どこに住むかで、健康寿命が決まる』理由は、以下のようなことだ。

まず一つ目は、“家”や“住んでいる環境”そのものが、高齢期の身体的リスクになるからである。平成29年の高齢社会白書によれば、高齢者の事故のうち77%が家の中で起こっている。段差や階段につまづいて骨折し、入院して一気に衰えが進んでしまうケースや、暖かい居間から寒い風呂場へ移動する際など、家の中の寒暖差によって失神・心筋梗塞・脳梗塞などを引き起こすケース、そのような緊急時に誰にも気づかれず、放置され、手遅れになってしまうケースなどが代表的なものだ。家が(高齢者にとって)危険で不慮の事故が起こってしまえば、せっかくの健康的な生活習慣も水の泡になってしまう。そう考えれば、①転倒リスク(段差・階段がある)、②温度差のリスク(家の中の寒暖差がある)、③放置のリスク(誰も近くにいない)が排除された家に住むのは、健康長寿にとって極めて重要と言えるだろう。

二つ目は、住んでいる環境が、健康習慣を実践する動機を大きく左右するからだ。日本老年学的評価研究機構の調査の中に、『「運動する」だけでなく、「誰かといっしょに運動する」と抑うつ状態になる人の割合が下がる』『友人が多い高齢者は、歯が多い』などとあるように、他者の存在が健康習慣をより効果的にするし、健康維持を心がける気持ちを強くする。子供が独立し、職場もなくなった高齢者は、他者の目にさらされる機会がだんだんと少なくなってくる。誰も見ていないところで、手を抜きがちになるのは若い者も同じだ。運動するにも、自分ひとりだとすぐやめてしまうところを、誰かが一緒だとちょっと頑張るようになるし、継続する気にもなる。歯の健康が大事だと分かっていても、誰とも会う機会がない高齢者と、日々人と会う人ではケアに対する気持ちも違ってくる。食事だって、自分ひとりのために一生懸命に食事を作る人はほとんどいないだろうが、誰かと一緒に食べるのだと作る気合も違うし、食欲だって変わってくるはずだ。健康長寿には確かに健康習慣が重要だが、その健康習慣を継続し、効果的なものにするには、他者の存在が常に感じられる場所に住むことが欠かせないのである。

健康習慣は、この二つを満たした場所に住むことで初めて有効になる。せっかくの健康習慣も、どこに住むかによって効果は大きく変わるし、場合によっては、健康習慣の意味がなくなってしまうケースも考えられるのである。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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