高齢者ドライバー対策は「自動ブレーキ搭載車両」専用免許では解決しない

画像: Maryland GovPics

2019.07.25

ライフ・ソーシャル

高齢者ドライバー対策は「自動ブレーキ搭載車両」専用免許では解決しない

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

日本政府は「自動ブレーキ搭載車両のみ運転可能」という高齢者専用免許案を真剣に考えているらしいが、大多数のお年寄りにとって現実的な選択肢にはならないだろう。むしろニュージーランドのような「アメとムチ」の組み合わせこそが合理的で納得性が高く、しかも実際的な施策といえる。

そうした心配をぬぐえない、老化により全般的な認知・判断機能が少しずつ衰えつつある高齢者たちには、やはり『自動ブレーキ搭載車両』に買い替えるか、『免許返納』かの2択しかないのだろうか。そんなことはない。政策としてはもっと柔軟かつ実際的に考えるべきだ。

高齢者ドライバー対策で参考になる取り組み例がニュージーランドにある。彼の国もまたご多分に漏れず高齢者ドライバーが増えているが、「自主的に免許を返納するか、自動ブレーキ搭載車両を買いなさい、さもないと悲惨な事故の加害者になるぞ」などという無慈悲な脅しを言う訳ではない。なにせ日本以上のクルマ社会なのだ。代わりに「アメ」と「ムチ」の組み合わせによる現実的な方策で高齢者の事故を抑制しながら、彼らの生活を支えようとバランスを取っている。

まずアメのほうは、多少問題がある高齢者でも、可能であれば限定条件付きの免許を与えることだ。しかも一律ではなく、その高齢者の生活事情や認知機能の程度に応じて、という細やかさである。具体的には、「自宅周辺の半径〇マイル以内」とか「晴れの昼間だけ」とかだ。

「ムチ」のほうは、有効期間の短縮、医師の診断書の提出と、診断書の内容によって課される実車試験という科学的な多重アプローチである。

75歳になった時は一律に運転免許を更新しなければならない。その後は80歳になった時、及びそれ以降2年ごとに運転免許を更新する必要がある(狭い道路が多い日本の都会を走るなら1年ごととすべきかも知れない)。

75歳以上の者が運転免許を更新しようとするときは、認定された医療専門家診断書が必要である(幼なじみの近所の医者による「なぁなぁ」の診断じゃダメということ)。75歳以上の者は、診断書において「医療上の運転適性はあるものの、安全に運転する能力について重大な疑義がある」とされたときは、実車試験を受けなければならない(日本のように講習だけという訳にはいかないのだ)。当然、診断書および実車試験の結果によっては先に述べたように運転免許に条件が付けられることになる。

どうだろう。日本の現状と比べるとはるかに合理的で、高齢者にとって納得性が高く、社会的にもずっと安心ではないか。是非、日本政府関係者も参考にして欲しいものだ。

【追記】オーストラリアのニューサウスウェールズ州でもニュージーランドと同様の高齢者ドライバーの免許更新制度を施行しているらしい。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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