日本がコロナ検査に消極的なワケ

画像: The National Guard

2020.04.08

経営・マネジメント

日本がコロナ検査に消極的なワケ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

日本は先進国で唯一、新型コロナウイルス検査の実施に関してずっと消極的だった。その理由が詳しく政府から説明されたことはないが、概ね類推できる。その消極策は、「思い込み」と「工夫の放棄」によってもたらされた「大失策」かも知れない。

遂に日本でも大都市圏で緊急事態宣言が出される事態に至った。残念ながら新型コロナウイルスの治療法が確立していない中で、感染拡大を防ぐ唯一の方法は患者およびその濃厚接触者の隔離である。したがって効果的なウイルス封じ込め対策は「クラスター把握→感染者隔離&行動履歴追跡→濃厚接触者の検査」だ。欧米の感染専門家の合言葉は”Test, test and test”(とにかく検査せよ)で、とにかく感染が疑われる人を片っ端から検査することがすべての始まりなのだ。

お隣・韓国は、感染者数は早い時期から有数の多さだが、その検査の徹底度とフォロー体制の充実(感染者の訪問場所の公表など)により「模範的な対策」と世界からは高い評価を受けている。ドライブスルー検査まで実施しているのだから、悔しいけれど大したものだ。

そんな中、先進国の中で唯一、日本は検査の実施に関してずっと消極的だった。有力メーカーへのPCR検査機の生産働き掛けにも政府は及び腰で、民間で進めていた幾つかの簡易検査キットの採用検討にも厚労省は消極的なままだ。

保険適用を受けて全国800カ所ほどの帰国者・接触者外来にまで拡大したとはいえ、PCR検査が実施できる機関はまだまだ限られており、しかも診療所や小さな病院経由で保健所に検査依頼をしても大方は断られるそうだ。

ではもしあなたが自らの感染を強く疑うなら、どういうルートならよいのだろうか。いきなり医療機関に飛び込むのではなく、各地の新型コロナ受診相談窓口(帰国者・接触者電話相談センター)に電話相談すれば、症状・背景によって判断されるので、その指示に従う必要がある。

最近の渡航歴や症状などから感染疑いのある場合、帰国者・接触者専門の外来にて診断され、そこで感染疑いが濃厚となれば当外来の医師から保健所に連絡され、保健所の判断で初めて検査が実施される、という繁雑なプロセスをたどる。

言い換えればこの途中のどこかで「渡航歴もないので感染疑いが濃くはない」とか「症状が軽いので、後回しにしても大丈夫だ」などと判断されれば、検査は受けさせてもらえない。実際、感染経路が分からない状況が増えた今、こういった理由で検査を受けられないという苦情が溢れているし、一種の「たらい回し」に遭った挙句、検査・入院になかなか至らずに結果的に重症化してしまったという訴えも目にする。

ではなぜ厚労省はこれほどまでに新コロナウイルスの検査に消極的なのだろう。幾つかの理由が考えられる(以下、事実を基に、彼らの判断の筋立てを類推している)。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

世界的戦略ファームのノウハウ×事業会社での事業開発実務×身銭での投資・起業経験=実践的な創業の知見を誇ります。 ✅足掛け35年超にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクト=PJを主導 ✅最近ではSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)PJの一つを支援 ✅以前には日越政府協定に基づくベトナム・ホーチミン市での高速都市鉄道の計画策定PJを指揮  パスファインダーズ社は少数精鋭の経営コンサルティング会社です。事業開発・事業戦略策定にフォーカスとした戦略コンサルティングを、大企業・中堅企業向けにハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は中小企業向け経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。特に後継経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/       

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