「あなたの強みは何か?」に、どう答えるか。(【連載24】新しい「日本的人事論」)

画像: nubobo

2019.03.20

組織・人材

「あなたの強みは何か?」に、どう答えるか。(【連載24】新しい「日本的人事論」)

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

第二に、強みは原則化・抽象化されている必要がある。たとえば、「営業経験が豊富」「総務部長を3年間務めた」「社長賞を3回獲得した」「新サービスを立ち上げた」などは、具体的な事実であり、強みを表現したことにはならない。強みは、それを使えば何度も成果が出せるという再現性と、それは他の分野にも使えるという汎用性が求められる。したがって、成果や経験そのものではなく、それらの原動力となったこと、それらの結果として得られたことを表現しなければならない。キャリアをていねいに振り返り、自分ならではの能力や姿勢やスキルや知識やマインドなどを記述することだ。

第三に、強みは、本人が磨き甲斐を感じるものである。強みと自覚するからには、それを客観的に測ったときのレベルを分かっているだろうし、深さや難しさ、課題も見つかっているのが普通だ。もうこれで十分だと満足しているようなら、おそらくそれは強みではない。勉強すればするほど、自分が知らないことがいかに多いか分かるのと同じで、強みと言えるレベルにあるなら、その未熟さや改善点がいかに多いかが理解できるようになるはずだからである。また、強みによって成果を残し、組織に貢献できている実感があるのなら、さらにその強みを磨きたくなるのは当然だ。自らのレベルを客観視し、課題も見えており、磨き甲斐や磨く喜びを感じているなら、それは強みと言えるだろう。

第四に、強みは、周囲との認識の一致が欠かせない。自分は強みだと思っているが、周囲にはそういう認識がないという状態では、活かそうにもそういう場や役割が与えられない。周囲が強みだと思っているのに、本人にはそういう認識がないという場合では、活かしどころにズレが出てしまい成果につながらない。両者ともに気づいていない強みというものがあれば、実にもったいないことになってしまう。つまり、強みはジョハリの窓で言う「開放の窓」にあって初めて、成果や貢献につながっていくのである。メンバー間の深いコミュニケーションを通した十分な相互理解は、互いの強みの発見と活用に欠かせないということになる。

「差異化」「原則化」されており、「磨き甲斐」を感じ、周囲との「共通認識」があるものを『強み』と呼ぶ。「私の強みは何か?」という重要な問いへの答は、この4点をクリアする必要がある。正社員制度や職能資格制度の中でほとんどなされることがなかった問いであり、コモディティ労働者を決め込んでいる人にとっては必要を感じない問いでもあるだろうが、近い将来、この問いが人員配置や育成、評価・処遇の軸になるはずだ。ダイバーシティの目的が「雇用の多様化」から「強みの多様化」の段階に移行し、賃金が「時間」から「能力(強み)」へのリンクを強めるようになるだろうと思われるからである。

働く人の意識も変わってきている。会社を変わることを視野に入れたり、あるいは生涯現役で働こうとするなら、強みがもっとも重要であるのは自明のことだし、ワークライフバランスを実現するためには、拘束時間の長い働き方よりも、強みを活かして働くのが良いに決まっている。昇進よりも強みのほうが高い処遇を得やすいというケースも見られるようになってきた。今後はますます、強みを活かして働こうとする人が増えていくだろう。

自らの強みを、的確に表現すること。どのような働き方を選択するにせよ、これが重要な時代を迎えているのである。

【つづく】

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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