《コモディティ労働者》から脱出せよ(【連載23】新しい「日本的人事論」)

画像: whity

2019.02.27

組織・人材

《コモディティ労働者》から脱出せよ(【連載23】新しい「日本的人事論」)

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

「労働は商品にあらず(Labour is not a commodity)」は、1944年のフィラデルフィア宣言にある大原則だ。労働者は売買の対象ではなく、生産のための手段・ツールでもない。資本家・経営者は、ひどく低い賃金、劣悪な労働環境、生活を犠牲にするような長時間労働などを排し、労働者を人間として尊重し、処遇しなければならないという考え方である。ワークライフバランス、ダイバーシティ、同一賃金同一労働など、昨今話題になっている働き方に関わるテーマも、この宣言が源流になっていると言ってもいい。

しかし、「労働者がコモディティではない」という状況は、経営がその考え方を転換し、具体的に改善策を講じれば実現できるというものではなく、働く側にも考え方の転換と具体的な行動・努力が求められる。強みや特徴があり、他に求めることができない労働者でいるためには(コモディティでない状態であるためには)、能力開発を図るなどの自助努力が欠かせないからだ。経営がいくら労働環境や処遇を改善したとしても、労働者が何の強みも特徴もないコモディティのようなレベルであったなら、コモディティとして扱わざるを得なくなってしまう。「労働は商品にあらず」の実現には、経営が労働者を商品扱いしないことと同時に、コモディティ労働者にならないようにする労働者自らの努力が求められるのである。

コモディティ労働者を減らすのは、社内に多様な強みや特徴を蓄えることであり、経営にとって大きなメリットとなる。市場や顧客の多様性に柔軟かつスピーディに対応するには、内部の多様性が重要になるからだ。また、時代が変化して、企業に異なる強みが求められるようになったときも対応しやすい。似たようなコモディティ労働者ばかりでは、市場にマッチしているときはいいが、環境が変われば共倒れしてしまいかねない。コモディティ労働者でないことは、労働者自身にもメリットが大きい。まず、報酬が高くなる。コモディティ労働者の賃金が低いのは、ありふれた商品の値段が下がっていくのと同じだ。また、意思次第でいつまでも働きつづけられる。コモディティ労働者は年齢などの属性で比べられて職の安定を失いがちだが、独自の強みや特徴があれば社内はもちろん社外からも求められ続けるだろう。

しかしながら現実は、企業の人事施策も労働者自身も、むしろコモディティ労働を志向しているようだ。研修などはその典型である。全社員あるいは、階層別や職種別に一律の内容の研修を施す。必要最低限のレベルのものは分かるとしても、この階層・職種に必要なのはこのような内容の知識・スキル・意識であると定め、それを一様に課して終わりとする。そこには、多様性を生み出すという発想はなく、それぞれの個性の差異化・伸長という目的もなく、結果は当然、コモディティ化となって現れる。少し俯瞰してみれば、研修の流行りすたりに合わせるように、多くの会社が同じような内容の研修を実施してきているから、産業界全体でコモディティ労働者を作っているようにも感じてしまう。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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