《コモディティ労働者》から脱出せよ(【連載23】新しい「日本的人事論」)

画像: whity

2019.02.27

組織・人材

《コモディティ労働者》から脱出せよ(【連載23】新しい「日本的人事論」)

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

このような研修を受けて、それで学んだような気になっている労働者も多い。皆が知っていることを同じように知ること、皆ができることを同じようにできること、奨励されている資格を自分も同じように取得すること。それらに一生懸命になるだけ、それで十分だと考えて、自分らしい学びをしないのなら、それはコモディティ労働者へまっしぐらと言っていい。

同じ発想で作成される「等級定義」「評価基準」も、コモディティ化に拍車をかける。各役職に求められる能力などを定義し、それに基づいて昇格・昇進が検討されたり、定期的な評価やそのフィードバックが行われたりする。この反復・継続は、従業員に対して会社が定めたあるべき姿、求める人材像を刷り込むことそのものであり、「等級定義」や「評価基準」には書かれていない(漏れている)要素を忘れさせるものであって、労働者のコモディティ化の促進にほかならない。ダイバーシティを掲げながら(多様性が重要だと少なくとも表面的には言っているのに)、「等級定義」「評価基準」によって評価・処遇を行うのは、大きな自己矛盾であると気づかないのが不思議である。

正社員制度と終身雇用・年功序列、それを支える職能資格制度といった日本特有(日本だけ)の仕組みでは、コモディティ化は避けられないという指摘もあるだろう。日本の労働法制は、原則として解雇を禁じている。また、雇用期間の定めのない「正社員」として、最後まで責任を持って会社が面倒をみるというのが、日本の労働慣行である。そのためには、強みが活きる特定の業務しか行わない労働者よりも、どんな時代になっても、一定のレベルで何でもこなせる労働者ほうが、会社にとっては都合がよい。もちろん、本人にとっても、苦手なことをなくしておけば、あるいはとりあえず何でもこなせるようにしておけば、会社の中では仕事がなくならないから都合がよい。そう考える両者にとっては、「等級定義」「評価基準」をもとに運営される職能資格制度は合理的であり、したがって、コモディティ化は避けようのない、仕方のない結果なのだろう。

しかし、だからと言ってこのまま労働者のコモディティ化が行われつづけ、本来的な意味での「労働は商品にあらず(Labour is not a commodity)」が、いつまでも実現しなくてよいわけがない。第一に、日本も参加するILO(国際労働機関)による宣言を実質的に、無視することになる。第二に、コモディティ化やその原因となっている仕組みの継続は、ダイバーシティやワークライフバランス、同一労働同一賃金など、労働や人事に関わる現代の重要課題の解決・実現が遠のくことを意味する。第三に、社内の強み・特徴の多様性は、多様化するマーケットにおける企業の競争力であり、コモディティ労働は弱みとなる。エッジの立った商品やサービスの開発、新結合たるどうイノベーションの創出は、コモディティ労働者の集団には期待できないからだ。第四に、労働者の幸福感が高まらない。得意分野・専門性があり、周囲から期待され、それに応えて感謝されたり、さらなる成長を実感できたりするから仕事が楽しく、労働が人生の幸福感を高めることに寄与する。コモディティ労働では、このようにはならない。

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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