日銀政策への疑問(1)消費者物価指数2%アップ目標は適切なのか

画像: Marco Verch

2018.08.09

経営・マネジメント

日銀政策への疑問(1)消費者物価指数2%アップ目標は適切なのか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「消費者物価指数(CPI)で見たインフレ率が年平均で2%を突破するまでゼロ金利政策を続ける」という黒田春彦・日銀総裁が掲げる金融政策はどこまで有意義なのか、日本経済にとって本当に有効なのか、そもそも本当の狙いは別にあるのではないか、など素朴な疑問が幾つも湧き上がる。この日銀政策を題材に、企業戦略・政策を考える練習としよう。

こうした複眼的な観点で妥当な目標を設定するのが、今どきのまともな企業の目標設定だ。

では再び日銀(ひいては日本政府)の話に戻って、件の政策目標はこの「SMARTの法則」に照らし合わせてみるとどう評価されるだろうか。

まず確かに、CPIで見た年平均インフレ率なのでSpecific(具体的)ではある。次に公式的にはMeasurable(測定可能)でもある(ただしこの点については次のコラム記事で突っ込みたい)。しかしA=Attainable or Actionableかという点については大いに疑問がある。どうやって達成するのかという議論が元々あった上に、ずっと未達成な状況が続いていることからすれば、この目標はそもそも無理があるという評価は妥当なところだろう。

しかし問題の本質はそこではなく、次のR=Relevant(ズレていない)という観点で見たとき、本来の狙いとズレていることだ。本来「2%」は「デフレを脱出したこと」の成果目標だったはずなのだが、目標が独り歩きしていると言わざるを得ない。

今の日本経済は日本社会が享受できる環境条件の下で十分満足すべきレベルの好景気だ。そして少子化による人手不足と高齢化による年金生活者の急増という労働人口トレンドを考えれば、これ以上の消費者物価増加が望ましいと考えるほうがおかしい。つまり政策目標たるデフレの終息はすでに達成されたとみて構わないのだ。

こう言うと、「いや、世の中まだ安値でしか売れずに苦しんでいる業界・企業がいっぱいある」と目くじら立てて主張するお上追従派がいそうだ。しかしそんなのはインフレの世にも一定割合いる、低価格以外に工夫しようとしない低能経営のせいである。

今、政府・日銀に必要なのは、2%インフレ率を達成するために追加策を考えることではなく、「日本社会のあるべき姿はどんなものか」そして「そこに向かうために設定すべき新たな政策目標は何か」を考えることだと小生は思うが、如何だろうか。

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日沖 博道

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