「ジョブ・プライス制度」導入の5ステップ(【連載9】新しい『日本的人事論』)

画像: gtknj

2018.06.16

組織・人材

「ジョブ・プライス制度」導入の5ステップ(【連載9】新しい『日本的人事論』)

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

第一段階は、「ジョブ・プライス・シート(JPS)」の作成である。まず、仕事の内容とその価値、その報酬を明らかにするのが目的だ。本来的には、当該業務をマネジメントしている上位者が各々の職務内容について詳しく記述するのが望ましいが、詳細に業務が分かっているかというと、心もとないのが実際だろう。したがって、担当者による記述が現実的だ。項目としては、「①業務の目的(誰に何を提供しているか」「②具体的な目標(いつ、どのような状態を達成することが求められるか)」「③業務の内容(具体的な行動、使用するツール、その業務の関係者など、誰と何をどのようにやっているかに関する詳細な記述)」「④それにかかる時間」「⑤その遂行に必要な知識・スキル」などになる。そして「⑥その業務に対する報酬」となるが、これはいったん、その担当者に現実に支払われている給与・賞与で仮置きするのが良いと思われる。

もちろん、本来は①~⑤の内容を吟味し、上位者がその価値について検討した上で「仕事に値段をつける」べきだ。しかし、それをやってしまうと、「人についている値段」とのギャップが問題になってしまう可能性が高い。「仕事の値段>人の値段」となれば、現在の報酬に対する不満につながるし、「仕事の値段<人の値段」となれば、その人の価値や努力を否定してしまうようなことになる。「ジョブ・プライス制度」とは、人に値段をつけるのではなく、仕事に値段をつけるという大きなパラダイム転換であるので、その理解・浸透には時間がかかるのは仕方ない。全員がその考え方に納得するまでの期間、仕事の価値とその担当者の報酬に乖離がある状態に対して目をつぶり、徐々にその乖離を解消していくのが得策だろう。

また、上位者は担当者が作成したJPSに「余計な仕事・行動が入っていないか」をしっかりチェックする必要がある。本来はしなくてもいいこと、旧態依然の非効率などがあれば、それは削除するように求めるべきだ。人に仕事が張り付いていると、そのような状況になりがちであり、それがそのままJPSに反映されてしまうのは、仕事の本来の価値が明らかにできない。さらに、「やるべきなのに、やっていない」ことは、上司者が別途JPSを作成すべきである。取り組みたい課題があるのに忘れている、放置している、人手不足で取り組めていないといった仕事は、担当者に記述させるJPSから漏れるだろう。今、やられている仕事だけに、価値があるわけではない。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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