ムーミンと成人式。逆境を学びの機会に

2018.01.16

組織・人材

ムーミンと成人式。逆境を学びの機会に

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

着物着付け会社の被害にあった人はお気の毒としか言いようがありません。また全然別件ですが、センター試験の地理の問題でムーミンの知識が必要かどうかも話題となりました。年明け合い次いで起きた2つの問題ですが、受験生や成人という、キャリアの節目で起きたことをポジティブな教訓とできないか考えました。

ネットニュースのタイトルを見ただけの批判、「ムーミンの知識を問う」という誤解とは違い、仮に知識がなくとも消去法でも正解できることで、思考が必要な点が評価できます。ムーミンを熟知した学生だけが有利という批判は的外れです。問題の受け止め方によって不公平に感じたり、数式のような唯一無二の絶対正解のあるものではない点を批判するのは地理という学問の否定です。

今回の問題は、日本地理学会の提唱する、文理統合の複合的総合科学として地表空間の様々な自然現象や人間の諸活動、および自然と人間が織りなす地域現象を研究する方向とも合致しているといえるでしょう。


3.無菌培養ではなく回復可能な失敗経験が教育
子供がケガしてはいけないからという理由で公園から遊具を撤去し、ボール遊びは危ないという理由でサッカーも野球も禁止し、競争は差別だから順位付けを排除する。あらゆる不平等を人為的に排除していった結果、残るのは1984年の世界です。

社会主義革命の結果、巨大なる意思・全能の存在ビッグ・ブラザーが総てを監視し支配する世界がジョージ・オーウェルの1984年です。そこでは犯罪防止のため、言語も支配され思想的に好ましくない単語が抹殺されます。不良思想から人民を守るために、インターネットや外国の放送を遮断するどこぞの独裁国家のような世界。子供を無菌培養しようとするのは、正にそうした非現実的な世界を望むことだと感じます。

差別が悪いのは当然だし、犯罪は許されるものではありません。しかし存在するのも事実です。子供はもちろんわれわれすべての人間は、そうした社会の「悪」から完全に逃れられることはありません。だとすれば、好ましくないものを排除するのではなく、好ましくない「悪」の存在を教育し、自らもそうした危険に会うことを学ばせる方が重要です。

完全無菌社会のようなあり得ない理想論ではなく、差別も犯罪もある社会でも生き抜くため、理不尽な目に会ったこともこれからもっとひどい被害を受けないようになるための教訓として考えてはどうでしょう。大切な日を台なしにされ、金銭的にも大きな被害を負ってしまった傷は深いものと思います。被害に会われた方は心からお見舞いすると同時に、直接被害を受けなかった人たちは、詐欺的な犯罪行為への強い怒りを、さらに強く生きる教訓として学ぶ機会とする。


4.転んでもタダでは起きないタフさこそ
こうした事件を教訓に、前払いした業者が逃げたり、倒産したりするリスクがあることを学び、強引に契約を急がせたり、不自然に現金決済やおまけサービスをひけらかすセールストークに何かあるかもと考える、他山の石とする。自分に何の落ち度がなくとも犯罪的な被害に会うかもしれないことを学ぶ機会とすべきでしょう。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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