正しいお参りの前に

画像: photo AC: acwork さん

2017.12.31

ライフ・ソーシャル

正しいお参りの前に

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/世の中、揉めごとだらけ。なにか言っても、誤解されるだけ。テレビや新聞は、「上の人」たちの拡声売名、その痴話ケンカの宣伝洗脳。そんなのに、いちいちつきあう義理も無いんじゃないか。自分の人生を心配しよう。そして、お参りだ。欲を願っちゃいけない。私は無力だ。でも、きっとなんとかしてくれる。そう信じよう。/

 年の瀬なのに、あいかわらず世の中は騒がしい。あちこちの国と国が揉め、そのそれぞれの国の中でも、あれこれ、あっちだ、こっちだ、と揉めている。そこでなにか言っても、かってに誤解されるだけ。かってに誤解され、へたに担がれても、返す言葉も無い。

 無力感と罪悪感。なにか間違っていると思っても、権力者でもなく、有名人でもなく、我々は、なんの力も無い。怒る気力さえも無く、それが良くないことになるのがわかっていながら、ただ見過ごすしかない。そして、わかっていながら、なにもしなかった、という、罪の感覚だけが、いつまでも残る。

 その一方、世の中には、やたら万能感に満ちている人たちもいる。家柄、カネ、時流、名声、地位。あえてそれに逆らう理由も無いので、みんな、言うがまま、はいはい、と聞き入れる。とはいえ、じつはだれも、それに従う理由も無い。

 家柄、カネ、時流、名声、地位。そんなものは、どこかほかでもらってきただけ。いっちょかみして、いっしょに波に乗り、一旗上げよう、などという、ごうつくばりの野心家でもなければ、まったく知ったことじゃない。

 根本において、こういう余所から来た「上の人」には、肝心の人望が無い。それで、みんな面従腹背、結果が出ない、まとまらない、それどころか、人が離れ、瓦解していく。にもかかわらず、こんな崩壊を代わって引き受けようなどというバカもいないので、あいかわらず立場と責任だけは付いて回る。それでよけい、万能感と焦燥感が空回り。

 心中、業火に焼かれている「上の人」の当たり散らしを前に、庶民にはせいぜい、やり過ごすくらいのことしかできない。休まず、怠けず、働かず、ひたすら従順な無能で、目を付けられたりしないように、かといって、なにかの矢面に立たされたりしないように、低く低く頭を下げ、顔を背けるばかり。

 うちらからすれば、ゴジラも、ガメラも、仲裁を騙るウルトラマンも、結局、同じようなもの。あなたの味方です、応援します、とか言って、どこかからやってきて、我々の心を踏んづけて暴れ回る。小さい声なんか、まともに聞こうともしない。いずれも、自分の都合のいいように、下々は自分こそを支持しているのだ! と言い張って争う。だけど、それって、逆でしょ。ほんに疲れるわぁ。

 テレビや新聞は、こういう「上の人」たちの拡声売名、その痴話ケンカの宣伝洗脳の垂れ流し。でも、そんなのに、いちいちつきあう義理も無いんじゃないか。はやりの映画や音楽、本だって、同じようなもの。だって、つまらないし、関係ないし、へたに巻き込まれても、どうせ末端の末端の末端だから、なんの良いこともない。ニセの感動なんて、中毒になる覚醒剤と同じ。カネと時間を、ムダにむしり取られるだけ。イヤなので、消します、閉じます、知りません。メディア時代の、無関心、不視聴、非協力。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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