個人の時間管理術を会社の課題管理に適用してはいけない

画像: Jeremy Cruz

2017.05.17

経営・マネジメント

個人の時間管理術を会社の課題管理に適用してはいけない

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「重要性」と「緊急性」のマトリクスで課題取り組みの優先度を決めるというのは基本中の基本である。ところがここにも落とし穴がある。個人のタスク管理と会社の課題管理を混同すると間違った結論に行きついてしまうのだ。

「重要性」と「緊急性」のマトリクスで優先度を決めるという方法をネットで検索すると、多くの場合、図1のようなものと共に、ゾーンABCDの順で優先せよという話が紹介されている。これはスティーブン・R・コヴィー著のベストセラー「7つの習慣」に代表される多くの時間管理術の解説本やセミナーで紹介されているためであろう。

個人のタスクの優先度を決める場合には単純なので、この考えで構わない。何が単純かというと、仕事を「重要」「重要でない」のいずれかに、そして「緊急」「緊急でない」のいずれかに分類することが概ね可能だということだ。そして、さっさと判断してタスクに取り掛かるのにはこれくらい単純化するのが妥当だ。

ところが会社の経営課題など多様で複雑なテーマを扱うケースでこの「4象限」アプローチを適用するとおかしな結果を導く。なまじ経営者や経営企画部門にいる人たちは時間管理術の本をよく読んでいそうなので、「優先度の決定」といえばこういうものかと思い込んでしまいかねないので要注意だ。

会社(もしくは事業部門)の経営課題を抽出して、その中から優先度の高いものを絞る場面を想定して欲しい。明らかに重要度の低い課題はそもそも早い段階で除外されるだろう。すると残っているのはある程度重要な課題ばかりである。

その中で相対的重要度を評価するのだから、デジタル的に「重要だ」「重要でない」のどちらかに綺麗に収まることにはならない。必ず微妙なものが幾つも出てくるし、それぞれ比較して初めて「こちらのほうが重要かな」と決まるのが普通だ。緊急度も同じだ。

マトリクス図上にプロットすると、かなりバラけてしまうだろう(図2)。4つの象限のそれぞれ中心部分に固まるなどという奇跡はまず起きない。ここで仮に、時間管理術の発想から「4象限」アプローチでゾーンABCD順に優先度を決めたらどうなるだろう。違和感を覚える結果になってしまうことがお分かりいただけるだろうか(例えば課題Bと課題Cを比べたとき、優先順位が逆転してしまう)。

結局、図3のような斜め線を引いて、アナログ的に「線引き」するのが一番納得感を得られるのだ。個人の時間管理術の場合と比べて面倒なことは間違いないが、会社(もしくは事業部門)の経営課題を検討する場合には、これくらい手間を掛けてもバチは当たらない。

ちなみにこの斜め線の角度だが、経営課題など長期的観点を要する場合には45度ではなく、(重要度に重きを置くように)調整すると違和感を拭うのに有効だといった点は(少々テクニカルだが)覚えておいて損はない。

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