コンセプチュアル思考〈第24回〉 コンセプトの精錬法[6]~喩え

画像: Career Portrait Consulting

2017.03.29

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第24回〉 コンセプトの精錬法[6]~喩え

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ

◆寓話=比喩による教訓物語
修辞技法は主に、文章や語句においてなされるものですが、物語全体を一つの喩えとし、人生の教訓となるメッセージを発していく方法もあります。それが寓話です。例えば、「アリとキリギリス」「ウサギとカメ」でおなじみの『イソップ寓話』、そして『グリム童話』『アンデルセン童話』などには、豊かな比喩が満載です。私たちは直接的・教条的に、遊惰の生活は悪で、勤勉の生活は善だと教えられるより、アリの生き方・キリギリスの生き方として語られるほうが心に響きやすくなります。

また、世界のさまざまな地域に伝承される神話、さらには宗教の経典も、比喩を通して本質を伝える一大物語です。というより、比喩を用いてしか、神や仏の本質は表現しえないと言っていいかもしれません。それほど「喩え」という方法は強力なものです。


◆6-b)視覚的に見立てる
「見立て」とは芸術の世界の言葉で、対象をほかのものになぞらえて表現することをいいます。例えば、禅宗寺院などで見られる枯山水。そこでは白砂や小石で描いた文様を水の流れに見立てます。さらには、その水の流れを無常として見立てる。そして庭全体を宇宙に見立てる。また、一つ一つの砂粒を地球に見立てたり、人間に見立てたり。そのように比喩的な想像で物事を表わそうとするのが見立てです。

また、広大な夜空に布置された星々。そこに古代の人びとは壮大な星座物語を編んでいきました。一見無意味に並んだ星々を、獅子や蠍(サソリ)、蟹(カニ)、天秤(てんびん)、飛び魚(トビウオ)などに見立て、この大宇宙の本質をつかもうとする人間の試みです。

もっと卑近な例で言うと、「あの岩がサルの顔に見える」とか、テキストメッセージの「(^0^)」を笑顔の代用にするとか、そういったことも見立てです。また、ビジネスの世界で言えば、「孫の手」という名称は、仙女「麻姑(まこ)」の手に似ているところから来ていますし、お菓子の『柿の種』(浪花屋製菓の登録商標)はまさに柿の種に見立てて名づけられたものです。さらには、最近の概念である「クラウド・コンピューティング」も雲(クラウド)の性質になぞらえ、こう呼ばれるようになりました。

◆2つの方向:〈inside→out〉と〈outside→in〉
以上みてきたように、物事のとらえ方を「喩え」を用いて精錬していくとき、そこには2つの方向の思考が同時に存在しています。私たちはこの2方向を無意識のうちに激しく運動しています。


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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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