経営戦略構文100選(仮)/構文14:イノベーションのジレンマ

画像: ぱくたそ

2017.05.12

経営・マネジメント

経営戦略構文100選(仮)/構文14:イノベーションのジレンマ

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。

しかし、そう簡単には市場はできない。既存のお客さんは「そんなものは要らない」と言っているわけですから、新しいお客さんをゼロから取らないといけない。ここでうまくいかないと破壊的技術は破壊を起こすことができません・・・。

でも、運よくお客さんを見付けます。大きなコンピュータはバカでかい記憶媒体でいいわけですが、PCは小さいので小さな記憶媒体を必要とします。これが最もわかりやすいでしょう。でも当時はPCなんて誰が使うの?と言っていた時代です。だから、既存の大きなコンピュータを使う企業は小さな記憶媒体なんて要らず、PCのメーカーが成立して、そこが5インチや3.5インチといった小さな記憶媒体を使うことを見つける必要があったわけです。

⑤の「新規参入企業が上位市場へ移行する」です。これが私は面白いと思いますね。当初は新しい顧客だけが興味を示す破壊的技術ですが、ある程度事業が軌道に乗り、技術投資が行われると性能が上がります。すると、優良企業の既存顧客は以前は興味を持たなかったのに、破壊的技術に興味を持つようになるわけです。

この時、既存企業はまだ破壊的技術に興味を示しません。なぜなら、利益率が既存の商品に対して低いからです。今の商品で儲かるのに、新しい利益率が低い商品に手を出すかといえば、出さないわけです。

既存の優良企業が手を出さないインセンティブが働きますが、たいていは破壊的技術を売っている企業はぎりぎりと言うかカツカツの状態でやっていますので、大喜びで優良企業の既存顧客に破壊的技術でできた商品を売りまくるわけです。つまり、破壊される側と破壊する側で逆のインセンティブが働く。これが大事なことです。

そして最後の⑥、「実績ある企業が顧客基盤を守るために遅まきながら時流に乗る」です。たいていはこの時には既に遅く、このマーケットでは破壊的技術の方が優位性を持っているレベルまで技術革新が進んでしまいます。すると、既存の優良企業は勝てません。そして、市場を放棄し、破壊的技術を擁した新興企業が成長することになるわけです。

以上が、「イノベーションのジレンマ」が起こるプロセスです。当初は見向きもされなかった技術が、新しい市場を見つけ、技術革新のための顧客基盤を得ることで、既存市場を侵食し、ついには既存の優良企業を負かせてしまう、というプロセスなわけです。

利益率の問題から、既存企業と新興企業には逆のインセンティブが働くのが面白いですよね。高い利益率に慣れている企業は、なぜわざわざ利益率が低い市場に参入するのかが分からない。新興企業は低い利益率でやっていますので、喜んでシェアを食いに行く。だから、両者とも合理的な決定をしていて、長期では、破壊的技術が既存技術の市場を飲み込んでしまうので、既存企業は撤退することになる・・・。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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